2015年度シラバス
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科目名
移動体通信工学 <エレ情>
シラバスNO
1511500452
担当教員
吉田 実
開講年次
3年次
単位
2単位
開講期
6セメスター
分野
科目区分
専門科目
必修選択の別
選択科目
英文科目名
Mobile Communication Engineering
備考
授業概要・方法等
 現代社会に不可欠となっている、携帯電話などに代表される移動体通信技術は私たちの生活に大きな恩恵をもたらしている。ただし、今日の極めて便利な移動体通信網が築かれるには多くの高度な技術が活用されている。これらについて理解をし、利用されている理論ならびに技術や方式について活用できるようになる。また、移動体通信の高速化には、そのバックボーンとなる有線の高速通信網として光ファイバーネットワークが存在していることも学習する。
 学習の順序として、まず移動体通信の技術的な概要を理解し、その後にネットワークの構成や無線通信における各種の障害の軽減方法、正しくデータを伝えるための技術、大容量伝送に必要な多重化などの理論について学ぶ。
 また、これらを通じて、第三学年前期で学習をした通信方式がどのように活用されているかも理解し、通信分野に関する広範囲な理解と知識ならびに洞察力を身につける。
 なお、評価基準は下記の「成績表方法および基準」に100点満点の割合で記載しているが、下記の評価に基づいた点数が59点以下であり、あと一歩で到達目標を達成すると判断した場合は、必要に応じて追加指導(講義、試験、レポート等)を実施する。追加指導で達成目標をぎりぎり満たしたと判断できれば60点を与える。
学習・教育目標及び到達目標
移動体通信システムの基本的な仕組みを理解し、それにより移動体通信に求められる特徴ならびに要求事項などを説明でき、さらには移動体通信システムが高品質かつ大容量に情報伝送可能となっている技術的な面について知識を身につけ、基本的なシステムの選択と運用ができるようになることが目標である。

この科目の単位修得により、以下の項目の知識と能力を身につける。
1.移動体通信に用いられている基本的なシステムを理解し説明できる。
2.電波を用いた移動体通信における各種の問題点を理解し、その解決策を説明できる。
3.セルに関する考え方を理解し、それらがどのように連携しているのかを説明できる。
4.高速伝送に不可欠な変調方式や多重化方式について理解し、コンステレーションを作図できる。
5.スペクトル拡散技術について理解すると共に簡単な直交コードを作成できる。
6.アナログ信号をディジタル信号に変換する仕組みと、通信品質の改善技術を説明できる。
7.車両などにおける移動体通信技術に関しても説明できる。

この科目の単位修得は電気電子工学科エレクトロニクス・情報通信コースで設定した学習・教育到達目標Aの達成に主体的に関与している。
成績評価方法および基準
定期試験 70%
演習、小テスト 30%
授業時間外に必要な学修
 講義において配布する資料ならびに講義中説明された重要事項などを整理するためにノートを作成すること。講義終了後に自宅などで講義資料や重要事項をノート化することにより、復習と共に理解が不十分な箇所を発見できる。
 また、講義中に実施した小テストや例題はその応用問題まで想定して学習を実施すること。
教科書
使用しない。資料を配付するのでノートを作成する事。
参考文献
[ISBN]9784339007527 『ディジタル移動通信の電波伝搬基礎』 (唐沢 好男, コロナ社)
[ISBN]9784339008159 『OFDM技術とその適用』 (生岩 量久, コロナ社)
[ISBN]9784274201509 『わかりやすいOFDM技術』 (伊丹 誠, オーム社)
[ISBN]9784822284909 『携帯電話はなぜつながるのか 第2版』 (中嶋信生, 日経BP社)
関連科目
通信方式、情報理論、フーリエ・ラプラス変換論、オプトエレクトロニクス、ネットワーク工学、基礎電子回路、アナログ電子回路、電気回路Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ
授業評価アンケート実施方法
前期開講科目は7月頃、後期開講科目は12~1月頃に実施します。
研究室・メールアドレス
吉田教授室(31号館2階)
yoshida@ele.kindai.ac.jp
オフィスアワー
月曜日 15時00分〜16時00分 
水曜日 11時00分〜12時00分
授業計画の項目・内容
第1回      学習・教育目標との関連説明。移動体通信の概観
学習・教育目標におけるこの科目の位置づけについて説明する。
現代社会の活動に不可欠となっている携帯電話など移動体通信の全体像を概観し、歴史的な背景やその役割など社会的な意味合いについて理解できる様になる。

第2回      電話網の接続の仕組み
移動体通信の仕組みを知るためには、従来の固定電話網の仕組みから順を追ってその接続の手順を理解する必要がある。携帯電話網との比較を念頭に置きながら、加入者間の接続方式について理解する。

第3回      携帯電話網の接続
移動体通信は最終的に電波を利用して加入者の端末と結んでいる。使用場所の定まらない移動体が世界中と接続できるように、多くの仕組みと装置が働いている。無線、コアネットワーク、ホームメモリーなど移動体通信が目的の加入者と繋がるために必要なシステムを理解する。移動体通信、特に携帯電話におけるセルの考え方やハンドオーバーなどについて理解する。

第4回      無線アクセス
移動体の端末は、セルと呼ばれる微小な無線区域で基地局と接続される。セルの大きさや、セル間の移動などには工夫が凝らされている。また、無線基地局のアンテナにも工夫が凝らされ、電話以外の分野ではROFなどの新しい技術も実用化されている。これらを理解し、無線アクセス技術の仕組みを説明できる様になる。

基地局から他の加入者への接続は、コアネットワークと呼ばれる大規模な通信網が存在する。遠距離間で情報を伝送できる仕組みを説明できるようになる。

第5回      コアネットワーク
移動体通信網は、無線区間を除く長距離大容量のバックボーンはコアネットワークと呼ばれる有線システムで構成されている。音声とデータ通信の扱い方などを含め、コアネットワークの構成を理解する。

コアネットワークを支える光ファイバ網の大容量伝送技術について技術ならびにその特性理解する。

第6回      コアネットワークで取り扱うデータ
コアネットワークでは、データと音声を同時に扱う。IP接続とリアルタイム性の確保などの必要性について理解する。

第7回      光通信網
大容量伝送を実現するため、コアネットワークでは光通信網が利用されている。光通信網によって大容量通信が実現できる理由を、光の物理と通信用デバイスの仕組みを通して理解する。

第8回      無線による情報伝送技術
限られた周波数資源を有効活用するために開発された技術を把握し、説明できる様になる。

第9回      多値変調
単一のパルスで多くの情報を伝送するための、波の位相を利用したQAM等の伝送技術と共にビットとシンボルについて理解し、コンスタレーションを作図できる様になる。

第10回     高速化のための変調方式(1) -各種の多重化方式-
無線を利用した高速伝送に不可欠な、時分割多重、周波数分割多重、符号分割多重などの各種の多重化技術について説明できる様になる。

第11回     高速化のための変調方式(2) -スペクトル拡散-
符号分割多重あるいはスペクトル拡散と呼ばれる無線技術について学び、その特徴ならびに大容量伝送が可能となり仕組みを理解すると共に、直交符号を作成できる様になる。

第12回     高速化のための変調方式(3) -直交周波数分割多重-
周波数資源の有効活用を始めとする各種の特徴を持つ多重化技術として重要なOFDMについて学習しその特長を説明できる様になる。

第13回     高速無線通信と超高速移動体通信技術
移動体における高速ディジタル通信に用いられている、MIMOなどの高度な技術とフェージングについて説明できるようになる。また、第四世代、第五世代と呼ばれる新しい技術について学習し、如何にしてこれを達成しようとしているのか理解する。

第14回     無線伝送路の障害ならびにディジタル信号処理
移動体通信に用いられる無線電波は、各種の障害を受ける。これらの障害を解消あるいは軽減し通信品質を向上するための技術について把握する。また、ディジタル信号その入力と出力は人間が認識するためのアナログ信号である。ディジタルとアナログの変換をどのように行っているか理解する。

第15回     離散時間信号処理ならびに衛星などによる通信
ディジタルとアナログの変換をどのように行っているか学習すると共に、ディジタル信号の信号処理について理解し、離散時間フーリエ変換ができるようになる。さらに、QAM変調における誤り発生とその対策について理解する。その他の移動体通信として、列車無線、ディジタルサイネージ、衛星移動体通信などについても説明できる様になる。

定期試験
試験時間は60分間とする。
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