2017年度シラバス
科目名
生命科学
シラバスNO
1711900012
担当教員
西尾 和人,岡田 斉,後藤 敏一,藤田 至彦,山本 和夫,坂井 和子,デベラスコ マルコ アントニオ
開講年次
1年次
単位
120時間
開講期
前期
分野
科目区分
基礎科目
必修選択の別
必修科目
英文科目名
備考
授業概要・方法等
医学・医療を学ぶ上で生命現象の理解は必須であり、分子レベルから個体レベルまで幅広い知識が要求される。近年の科学・技術の進歩は、従来の生物学に加えて分子生物学、細胞生物学、遺伝子工学等の新しい学問領域を生み出した。《生命科学》はこれら全ての科学を包括したものである。本科目では講義を通じての勉学だけでなく、講義内容に関連した実験や観察などを介して総合的に生物についての理解を深める。講義で得た知識や考え方を、実際に生物を使った実験や観察を行うことにより深めるとともに、その過程より新たな問題点を見出し、その解決のための自主学習や知識の整理を行う。医学部における基礎教育科目として基礎・基本事項の学修に努め、医学を学ぶ上での基盤となる知識・技術を修得する。

前期15週間にわたる講義・実習を通じて、医師や医学研究に必要な生物学の基礎知識と技術を習得する。まず、実験動物学、哺乳類の体制と器官・器官系の構造・機能について、講義と実習(ラットの解剖)を通じて学ぶ。次に、生物を理解する上での基礎である細胞の構造と機能について学ぶ。具体的には、細胞理論、細胞の構造と働き、代謝と酵素、タンパク質と遺伝子、タンパク質の合成、細胞周期(S期)、染色体の構築・核型、細胞周期(M期)、細胞の増殖・分化・細胞死、生体膜、膜輸送/電気シグナル、細胞呼吸と光合成について、講義と実習(ヒト核型標本の作製、光学顕微鏡による観察、血球の観察、器官を構成する組織・細胞の観察)を通じて総合的に学ぶ。
 講義担当者は、高校「生物」未習者を考慮した講義運営に努めるが、学生自身も参考書などを活用し、自学自習に励んで欲しい。

〔安全教育〕
 実験動物、実験器具・試薬の取り扱い方など、実習全般にわたる安全教育については実習ガイダンス(4月7日)で行い、個別の事項については各実習時に指導する。

〔実験動物・動物実験に関わる講習〕
 実習では実験動物としてラットを用いる。実験動物を扱う場合には、動物愛護・動物実験倫理についての考え方、およびこれらに関連する法令、指針等に関する講習を受けることが義務づけられている。このことから、4月7日に「近畿大学動物規程に基づく講習」を受講する。
学習・教育目標及び到達目標
一般目標(GIO):医師や医学研究に必要な生物学の基礎知識と技術を習得する。実験動物学、哺乳類の体制と器官・器官系の構造・機能、細胞の構造と機能について、講義と実習を通じて理解する。実習における生物の観察の方法、記録の方法(スケッチを描く;所見を記述する)、科学レポートのまとめ方、実習を安全に行うために守るべき事柄、実験器具・試薬の正しい取り扱い方など、基本的な事項を身につける。さらに、実習が実験動植物の生命の犠牲のもとに実施されることの認識に立ち、生命に対する真摯な態度を身につける。この科目の修得は、本学部の定めるディプロマポリシーの1と2の達成に関与しています。
行動目標(SBOs;抜粋):1(各テーマ共通).キーワードを抽出し、説明できる。1-2.細胞理論を説明できる。1-3.細胞の基本的な性質を説明できる。2-1.実験動物を説明できる。2-2.動物実験を説明できる。3-1.人体の内部構造から見た区分、内部の腔所を説明できる。3-2.方向と位置を示す用語を説明できる。4-2.原核細胞と真核細胞の細胞構造の違いを説明できる。4-3.主要な細胞小器官(核、ミトコンドリア、葉緑体、小胞体、ゴルジ体、リソソーム、ペルオキシソーム、中心体)の形態と機能を説明できる。5-2.代謝(同化と異化)を説明できる。5-3.代謝の機能を説明できる。6-2.アミノ酸の一般式を説明できる。6-3.アミノ酸の側鎖の物理化学的特性を説明できる。7-2.DNAからタンパク質への遺伝情報の流れを説明できる。7-3.遺伝子の構造(イントロン、エキソン)を説明できる。8-2.ヌクレオソーム、クロマチンを説明できる。8-3.間期染色体と分裂期染色体の分子レベルの構造を説明できる。9-2.細胞周期の各期の名称と、そこで起こる事象を説明できる。9-3.DNAの複製が半保存的であることを説明できる(半保存的複製)。10-2.相同染色体を説明できる。10-3.細胞周期におけるDNAの構造変化を説明できる。11-2.「Hayflickの限界」を説明できる。11-3.ヒトの細胞における増殖様式(増殖能力)の3群を説明できる。12-2.リン脂質の特性(両親媒性)を説明できる。12-3.生体膜の構造と機能を説明できる。13-2.細胞内液/外液のイオン組成を説明できる。13-3.人工脂質二重層の物質の透過性を説明できる。14-2.生きものの“仕事” を説明できる。14-3.グルコースが完全に酸化される場合の代謝経路(解糖系、クエン酸回路、電子伝達系;解糖、発酵)の概略(つながりや細胞内での局在)を説明できる。
《実習および関連講義》
正確に把握できる観察力を養う。的確な用語(専門用語・方向用語)を用いて、観察結果を正確に記録(図を描く;所見を記す)できる。実験器具、解剖器具(メス、ハサミ、ピンセットなど)を、目的に応じて正しく使うことができる。
関連講義:内臓の概観観察のための解剖の手順を述べることができる。
実習1-1.外部形態の特徴、雌雄の違いを説明できる。実習1-2.自然位(in situ)での頚部、胸部、腹部の諸器官を説明できる。関連講義:消化器系の観察のための解剖の手順を述べることができる。実習2-1.消化器系を構成する器官名と位置・つながり説明できる。実習2-2.消化器系の各器官の形状と特性を説明できる。関連講義:呼吸器系・循環器系の観察のための解剖の手順を述べることができる。実習3-1.喉頭、気管、気管支、肺のつながりを説明できる。実習3-2.気管、気管支の構造を説明できる。関連講義:心臓の内景の観察のための解剖の手順を述べることができる。実習4-1.心臓の構造(内景)を説明できる。実習4-2.弁(動脈弁、房室弁)の構造を説明できる。関連講義:泌尿器系・生殖器系の観察のための解剖の手順を述べることができる。実習5-1.尿路を説明できる。実習5-2.腎臓の構造を説明できる。実習6-1.染色体を分類できる。実習6-2.ヒトの核型を作製できる。実習7-1.光学(双眼)顕微鏡を正しく使うことができる。実習7-2.マイクロメーターを使って試料の長さを測定できる。実習8-1.標本作製における試薬による処理の意義を説明できる。実習8-2.プレパラート中の各細胞について、細胞の形状、染色体の特徴などから細胞周期の時期を特定できる。実習9-1.血液の薄層塗抹標本(ギームザ染色)を作製できる。実習9-2.血球〔赤血球、単球、リンパ球、好中球、好酸球、(好塩基球)、血小板〕のそれぞれの特徴を説明できる。実習10-2.小腸(器官)における組織(上皮組織、結合組織、筋組織、神経組織)の配置を説明できる。実習11-1.筋組織の細胞の名称とそれぞれの特徴を説明できる。実習11-2.神経組織の細胞の名称とそれぞれの特徴を説明できる。実習12-1.結合組織の細胞の名称とそれぞれの特徴を説明できる。
成績評価方法および基準
中間試験と学期末試験 85%
実習評価(実習レポート評価など);無断欠席の場合は減点 15%
試験・課題に対するフィードバック方法
 中間試験については、試験終了後の講義時に解説を行います。前期定期試験については、試験期間終了後に学生ポータルに解説文を掲載します。実習レポートについては、添削した上で評価を記し返却します。さらに、返却時にレポートについての講評を行います。
教科書
[ISBN] 『書名 版表示(シリーズ・叢書名・巻号)』 著編訳者、出版社:出版年)
[ISBN] 9784524261994 『Essential細胞生物学(原書第4版)』 (Alberts, B. et al.、南江堂:2016)
[ISBN]なし 『平成29年度 生命科学実習テキスト』 (生物学研究室編 2017)
参考文献
[ISBN]9784758120395『理系総合のための生命科学(第3版)』 (東京大学生命科学教科書編集委員会編、羊土社:2013)
[ISBN]9784407339215『サイエンスビュー生物総合資料(三訂版;高校「生物」未習者向け)』 (長野・牛木、実教出版:2013)
[ISBN]9784784931804『カラー図解 人体の正常構造と機能(改訂第2版)[全10巻縮刷版]』(坂井・河原、日本医事新報社:2012)
関連科目
分子生物学、生化学、解剖学
授業評価アンケート実施方法
医学部実施規定に準拠して行う。
研究室・メールアドレス
生物学第1研究室(後藤敏一;進学棟2階) gotoh-t@med.kindai.ac.jp
オフィスアワー
火曜日 16:30~18:00(後藤敏一)
授業計画の内容及び時間外学修の内容・時間
《講義》:1.細胞理論:生命体の基本単位は「細胞」であること、また、細胞の基本的な性質に何があるかを学ぶ。顕微鏡写真(光学顕微鏡、電子顕微鏡)から実体をイメージできるようにする。2.実験動物学概論:動物実験において認識しておくべき重要事項について学ぶ。3.哺乳類の体制:哺乳類の体が、どのような器官系から構成されているのかを学ぶ。4.細胞・細胞小器官(構造とおもな働き):細胞の基本構造を理解した上で、実際の細胞の多様なあり方を学ぶ。5.代謝と酵素:生体内での化学反応の特徴を学ぶ。6.タンパク質と遺伝子:生命体の構造と機能を理解する上で重要な、タンパク質の分子構造を学ぶ。さらに、細胞がタンパク質を合成するときに必要とする情報と、細胞内におけるその保存について学ぶ。7.タンパク質を作る:DNAに塩基配列として書き込まれた情報は、転写というプロセスによって引き出され、翻訳というプロセスによってタンパク質へと変換される。これら転写、翻訳の機構を学ぶ。8.染色体の構築と核型:真核生物における染色体(分裂期染色体)の構築のメカニズムを学ぶ。また、生物の染色体構成や分類方法を学び、ヒトの核型を理解する。9.細胞周期(S期):1個の細胞は、決まった順序で起こる一連の過程によってその中身を倍加し、二分して増える。この細胞周期の各期の特徴を学ぶ。さらに、S期におけるDNA複製のメカニズムを学ぶ。10.細胞周期(M期):真核生物の細胞の一般的な分裂様式である体細胞(有糸)分裂と減数(有糸)分裂のそれぞれが、どのような過程を経て進行するのかを学ぶ。11.細胞の増殖・分化・細胞死:体を作る細胞の増殖様式(増殖能力)、細胞分化、幹細胞、細胞死について学ぶ。12.生体膜:細胞膜や小胞体、ゴルジ体などの膜性構造体の膜(生体膜)の構造と機能について、流動モザイクモデルを基礎として、動的なあり方を学ぶ。13.膜輸送/電気シグナル:細胞膜を通しての無機イオンや水溶性の有機分子の輸送の機構を学ぶ。静止膜電位の発生の機構とその意義、さらに興奮性の細胞(神経細胞)における無機イオンの輸送と、興奮の伝導・伝達との関わりを学ぶ。14.細胞呼吸と光合成:生きものは、さまざまな局面でエネルギーを必要とし、そのほとんどはATP(分子)によって供給される。ここでは、ATP合成の機構、および葉緑体における光エネルギーの捕捉、化学エネルギーへの変換について学ぶ。
《実習と実習関連講義》ラットの解剖講義:哺乳類の体のつくりの基本を理解するための解剖の方法を学ぶ。消化器系を構成する各器官の形状、位置、つながりを理解するための解剖の方法を学ぶ。呼吸器系、循環器系の各器官の形状、位置、つながりを理解するための解剖の方法を学ぶ。心臓の構造を理解するための解剖の方法を学ぶ。泌尿生殖器系の各器官の形状、位置、つながりを理解するための解剖の方法を学ぶ。〔実習 1-5〕ラットの解剖:1.外部形態および内臓諸器官の形状、位置、つながりなどを学ぶ。2.消化器系の各器官の形状、位置、つながりと特性を学ぶ。3.呼吸器系-循環器系の諸器官の形状、位置、つながりと特性を学ぶ。4.心臓の構造と血流の一方向性のメカニズムを学ぶ。5.泌尿生殖器系の諸器官の形状、位置、つながりと特性を学ぶ。〔実習6〕ヒト核型標本の作製:講義で学んだ染色体・核型に関する知識や概念を基にして、実際に染色体を分類し、核型を作る。〔実習7〕光学顕微鏡による観察:光学顕微鏡の正しい使用法を習得する。試料のサイズの測定法、立体的に観察する方法を学ぶ。〔実習8〕体細胞分裂の観察:細胞周期のM期(分裂期)のさまざまなステージの細胞を観察し、とくに染色体の高次構造のダイナミックな変化と娘細胞への分配のされ方を学ぶ。〔実習9〕血球の観察(ギームザ染色):血液の薄層塗抹標本(ギームザ染色)を作製し観察することで、血液中の細胞のそれぞれの形、大きさ、染色性などの特徴を理解し、血球を分類する。〔実習10-12〕細胞・組織・器官-ラット小腸の構築:10.1つの器官が、どのような細胞から形づくられているのかを、ラット小腸の観察を通して学ぶ。4つの基本組織の配置と、上皮組織の細胞を理解する。11.筋組織、神経組織の細胞を理解する。血管の基本構造を理解する。12.結合組織の細胞を理解する。
 テーマ毎に設定された行動目標に従って、講義プリント・教科書・実習プリントの該当箇所を熟読する。ラットの解剖講義のホームワークプリント、講義プリントのプレ/ポスト・テストの該当箇所を、講義日程に連動させて実施する。後者については、学習前と学習後のそれぞれにおける習熟度を測定することで、各自の理解度の判断材料とする。各テーマについて、最低60分の予習・復習が必要である。

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