2018年度シラバス
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科目名
生命科学
シラバスNO
1811900007
担当教員
後藤 敏一,西尾 和人,角田 郁生,松田 学,藤田 至彦,坂井 和子
開講年次
1年次
単位
60時間
開講期
前期
分野
科目区分
基礎科目
必修選択の別
必修科目
英文科目名
備考
授業概要・方法等
 医学・医療を学ぶ上で生命現象の理解は必須であり、分子レベルから個体レベルまで幅広い知識が要求される。近年の科学・技術の進歩は、従来の生物学に加えて分子生物学、細胞生物学、遺伝子工学等の新しい学問領域を生み出した。《生命科学》はこれら全ての科学を包括したものである。本科目では講義を通じての勉学だけでなく、講義内容に関連した実験観察を介して総合的に生物についての理解を深める。科目《細胞・形態学》との連携カリキュラムにより、基礎・基本事項の学修に努め、医学を学ぶ上での基盤となる知識・考え方を修得する。
 前期15週間にわたる講義・実習を通じて、医師や医学研究に必要な生物学の基礎・基本事項を学修する。まず、「核酸と生命」のテーマのもと、タンパク質の構造と生体での機能、遺伝子の物質的基礎、遺伝子とタンパク質の関わり、遺伝子発現、DNAの複製、プログラム細胞死について学ぶ。次に、遺伝子の伝達について「体細胞分裂と減数分裂」のテーマのもと、実習での観察と共に理解を深める。「染色体の構築と核型」では染色体の分子的構築と核型、核型分析(実習)を学ぶ。つづく「細胞膜の構造と機能」のテーマでは、細胞膜の構造モデル、膜輸送、電気シグナル、興奮の伝導と伝達について学ぶ。「細胞のエネルギー代謝」では、酵素の働き、ATPの生体での役割、生物の仕事とエネルギー、呼吸、光合成、窒素固定を学ぶ。「メンデル遺伝の基礎/染色体異常と疾患」のテーマのもと、遺伝学の基礎、染色体異常と疾患の関わりを学ぶ。「微生物の構造・遺伝と感染症」では、微生物の種類、構造と分類、増殖、微生物による感染症などを学ぶ。「遺伝子操作とバイオテクノロジー」では、遺伝子操作の具体的な方法と医療への応用を学ぶ。「生物の進化と系統」では、ゲノムの進化、人類の起源・進化を学ぶ。
 講義は、学生自らの主体的な学習への取り組みを重視して行われる。講義を通じての疑問点・問題点の抽出と学生同士の議論を経て、知識・考え方の定着に努め、「学ぶ力」の育成に努める。講義担当者は、高校「生物」未修者を考慮した講義運営に努めるが、学生自身も参考書などを活用し、自学自習に励んで欲しい。
学習・教育目標及び到達目標
関連ディプロマポリシー
①医師になるために必要な医学の知識と技能を修得し、さらに日々向上に努めること。
②積極的に課題に取り組み、さらに自ら問題点を見いだし解決する姿勢を身につけること。
関連教育アウトカム
①医学的知識
②自律的継続的学習能力
③問題解決能力と医学研究への連結

一般目標(GIOs)
1)タンパク質の合成に必要な情報とその保存、遺伝子発現、細胞周期、DNAの複製、細胞死について学ぶ。
2)体細胞分裂と減数分裂について学ぶ。M期の細胞の観察により、染色体の高次構造の変化と娘細胞への分配について学ぶ。
3)染色体の構築とその維持、染色体の分類、ヒトの染色体構成を理解する。実習により、染色体を分類し核型標本を作る。
4)細胞膜の構造と機能について、流動モザイクモデルに基づく動的なあり方を理解する。細胞膜を通しての無機イオンや水溶性の有機分子の輸送について学ぶ。静止膜電位の発生、興奮の伝導・伝達のメカニズムを学ぶ。
5)自然界におけるエネルギーの流れを理解する。酵素の構造、触媒作用、酵素反応の特徴、生きものの仕事の種類、ATPの分子構造、合成のメカニズムを学ぶ。葉緑体による光エネルギーの捕捉と化学エネルギーへの変換、大気中の窒素ガスがNH3に還元されるプロセスを学ぶ。
6)メンデル遺伝の法則を理解し、家系図の書き方を習得する。
7)染色体の構造とその調節について理解し、その異常により引き起こされる不具合について理解する。
8)微生物(細菌、真菌、寄生虫、ウイルスを含む)の構造と分類を学ぶ。さらに、微生物の増殖・遺伝、微生物によって引き起こされる感染症とそれに対する治療・予防の基礎を学ぶ。
9)核酸、タンパク質の操作について学ぶ。ゲノム解析から遺伝子編集技術まで、医学分野に係わる遺伝子解析技術を学習する。
10)ゲノムの進化を通じて生物の進化と系統を学ぶ。人類の起源・進化を学ぶ。

行動目標(SBOs 抜粋;完全版は初回の講義で配布します)
1)タンパク質の構造、遺伝子、遺伝情報、ゲノム、ヌクレオチド、核酸の分子構造、エキソン、イントロン、RNAの種類と役割、転写・翻訳のプロセス、リボソームの構造と機能、コドン、アンチコドン、読み枠を説明できる。細胞周期の各期の名称・事象、半保存的複製、半不連続的複製、岡崎フラグメント、リーディング鎖、ラギング鎖、DNAポリメラーゼ、プライマーの必要性、テロメアの複製を説明できる。分裂促進因子、増殖因子、生存因子の働き、アポトーシスとネクローシスにおける細胞の変化の特徴、アポトーシスの内因性経路と外因性経路を説明できる。
2)相同染色体、細胞周期でのDNAの構造変化、分裂装置、動原体と紡錘体の機能、姉妹染色分体の分配の機構、体細胞分裂と減数分裂の過程、対合、二価染色体を説明できる。
3)ヌクレオソーム、クロマチン、間期染色体と分裂期染色体の分子レベルの構造、染色体の各部の名称と分類、常染色体、性染色体、相同染色体、核型を説明できる。
4)両親媒性、流動モザイクモデル、膜の流動性の意義、脂質分子の非対称分布、膜の形成、細胞外被と細胞皮層、細胞内液/外液のイオン組成、人工脂質二重層の透過性、膜輸送タンパク、受動輸送と能動輸送、ユニポート、シンポート、アンチポート、二次性能動輸送を説明できる。イオンチャネルの3タイプ、静止膜電位の発生機構、ニューロン、有髄神経、無髄神経の構造、電位依存Na+ チャネルの開閉、活動電位の発生、興奮伝導とシナプス伝達の機構を説明できる。
5)同化と異化、酵素による触媒作用、基質特異性、pH依存性、温度依存性、活性型運搬体を説明できる。生きものの仕事、解糖系、クエン酸回路、電子伝達系、ATP合成酵素、解糖と発酵、酸化的リン酸化、化学浸透共役を説明できる。葉緑体の構造、光合成における電子伝達反応と炭素固定反応の概略、光リン酸化、窒素固定、ニトロゲナーゼの働きと特性、レグヘモグロビン、マメ科植物と根粒菌の間の共生を説明できる。
6)遺伝学、遺伝型、表現型、優性、劣性、分離、独立を説明できる。家系図を書くことができる。
7)ヌクレオソーム、クロマチン、ヒストン、染色体異常症、異数性、均衡型を説明できる。
8)細菌、真菌、寄生虫、ウイルスの違い、微生物の分類(界、科、属など)、細菌の構造、ウイルスの遺伝子・増殖、微生物の病原性及び感染症、感染症に対する宿主の免疫反応の基礎、ワクチンの歴史・機構を説明できる。
9)遺伝子・タンパク質の発現と機能の解析、制限酵素、PCR、塩基配列決定、組換えDNA、次世代シーケンサー、ゲノム編集、バイオインフォマティクスを説明できる。
10)遺伝的余剰、相同遺伝子、直系遺伝子、純化選択、分子時計仮説、シンテニー区画、水平伝播、重複遺伝子、中立遺伝子、人類の起源(単一起源説)、進化の過程で受け継がれた形質や疾患について説明できる。
成績評価方法および基準
学期末試験(記述式および選択肢問題) 95%
実習評価(実習レポート・実習態度評価;無断欠席の場合は減点) 5%
試験・課題に対するフィードバック方法
形成評価試験については終了後に答え合わせをし、評価をフィードバックします。実習レポートについては、添削した上で評価(A/B/C)を記し返却します。さらに、返却時にレポートについての講評を行います。定期試験については、試験期間終了後にUniversal Passportに解説文を掲載します。
教科書
[ISBN]9784524261994 『Essential 細胞生物学 原書第4版』 (Alberts, B. et al.、南江堂:2016)
参考文献
[ISBN]9784895928755 『トンプソン&トンプソン 遺伝医学 第2版』 (福嶋義光訳、メディカルサイエンスインターナショナル:2017)
関連科目
細胞・形態学、分子生物学、生化学
授業評価アンケート実施方法
医学部実施規定に準拠して行う。
研究室・メールアドレス
基礎医学部門研究室(後藤敏一;進学棟2階) gotoh-t@med.kindai.ac.jp
オフィスアワー
火曜日 16:30~18:00(後藤敏一)
上記以外でも可能な場合があります。研究室を訪ねてください。
授業計画の内容及び時間外学修の内容・時間
第1週 Ⅰ.核酸と生命(1)タンパク質と遺伝子[後藤敏一]
酵素の主成分であるタンパク質の分子構造を学ぶ。細胞がタンパク質を合成するときに必要な情報は何か。また、この情報がどのように細胞内に保存されているのかを学ぶ。

第2週&第3週 Ⅰ.核酸と生命(2)タンパク質をつくる[後藤敏一]
DNAに塩基配列として書き込まれた情報は、転写というプロセスによって引き出され、翻訳によってタンパク質へと変換される。どのようにして転写、翻訳がなされるのかを学ぶ。

第3週&第4週 Ⅰ.核酸と生命(3)DNAの複製[後藤敏一]
細胞分裂の繰り返し(細胞周期)における各期の特徴を学ぶ。分裂ごとに2個の娘細胞に遺伝情報を伝えるために必要なDNAの複製が、どのようにして行われるのかを学ぶ。

第4週 Ⅰ.核酸と生命(4)プログラム細胞死[後藤敏一]
私たちの体は、細胞の制御された増殖、分化と細胞死のバランスによって、恒常的に維持されている。ネクローシスとアポトーシスに焦点を当てて細胞死について学ぶ。

第5週 Ⅱ.体細胞分裂と減数分裂[後藤敏一]
真核生物の細胞核の一般的な分裂様式である有糸分裂には、体細胞の増殖にみられる体細胞分裂と、生活環の特定の時期に行われる減数分裂とがある。それぞれの細胞分裂のプロセスを学ぶ。

第6週 〔実習 1〕体細胞分裂の観察[後藤敏一・松田 学]
細胞周期のM期のさまざまなステージの細胞を観察し、とくに染色体の高次構造のダイナミックな変化と娘細胞への分配のされ方を学ぶ。

第7週 Ⅲ.染色体の構築と核型[後藤敏一]
真核生物ではDNAがタンパク質(ヒストン)と結合し、精巧に折りたたまれて分裂期染色体を構築する。この構築と維持の機構を学ぶ。染色体の分類方法、核型を理解する。
第7週〔実習 2〕ヒト核型標本の作製[後藤敏一・松田 学]
講義で学んだ染色体・核型に関する知識や概念を基にして、実際に染色体を分類し核型標本を作る。

第8週 Ⅳ.細胞膜の構造と機能(1)細胞膜の構造[後藤敏一]
膜性構造体(細胞膜、小胞体、ゴルジ体など)の膜は、リン脂質二重層にタンパク質、糖質などが加わってできている。生体膜の構造と機能について、流動モザイクモデルに基づく動的なあり方を理解する。
第8週 Ⅳ.細胞膜の構造と機能(2)膜輸送[後藤敏一]
細胞は栄養分の摂取、不要な代謝産物の排出を行い、さらに細胞内のイオン濃度を調節している。細胞膜を通しての無機イオンや水溶性の有機分子の輸送について学ぶ。

第9週 Ⅳ.細胞膜の構造と機能(3)電気シグナル[後藤敏一]
細胞膜を挟んだ外界と細胞内での無機イオンの分布の偏りによって、細胞はある値の膜電位をもつ(静止膜電位)。静止膜電位の発生とその意義、興奮性の細胞における興奮の伝導・伝達を学ぶ。

第10週 Ⅴ.細胞のエネルギー代謝(1)糖質代謝と酵素[後藤敏一]
自然界におけるエネルギーの流れを理解する。生体内で起きている化学反応の多くは、酵素によって触媒されている。酵素の構造、酵素による触媒作用、酵素反応の特徴などを学ぶ。
第10週 Ⅴ.細胞のエネルギー代謝(2)呼吸[後藤敏一]
生きものは、さまざまな局面でエネルギーを必要とし、そのほとんどはATP(分子)によって供給される。ATPの合成のメカニズムを学ぶ。

第11週 Ⅴ.細胞のエネルギー代謝(3)光合成[後藤敏一]
細胞が必要とする有機物のほとんどは、光合成生物によって生産されている。植物や藻類の葉緑体による光エネルギーの捕捉と、化学エネルギーへの変換について学ぶ。

第12週 Ⅴ.細胞のエネルギー代謝(4)窒素固定[後藤敏一]
地球大気のおよそ78 vol%を占める窒素ガスを植物が利用できるようにするには、窒素固定と呼ばれる過程によってNH3に還元する必要がある。窒素固定について学ぶ。
第12週 Ⅵ.メンデル遺伝の基礎[坂井和子]
メンデル遺伝の法則を理解し、家系図の書き方を習得する。

第13週 Ⅶ.染色体異常と疾患[西尾和人]
染色体の構造とその調節について理解し、その異常により引き起こされる不具合について理解する。
第13週 Ⅷ.微生物の構造・遺伝と感染症[角田郁生]
微生物は細菌、真菌、寄生虫、ウイルスを含む。ここではそれぞれの微生物の構造と分類を学ぶ。さらに、微生物の増殖・遺伝、微生物によって引き起こされる感染症とそれに対する治療・予防の基礎を学ぶ。

第14週 Ⅸ.遺伝子操作とバイオテクノロジー(1)[藤田至彦]
核酸、タンパク質の操作について学ぶ。
第14週 Ⅸ.遺伝子操作とバイオテクノロジー(2)[坂井和子]
ゲノム解析から遺伝子編集技術まで、医学分野に係わる遺伝子解析技術を学習する。

第15週 Ⅹ.生物の進化と系統(1)[西尾和人]
ゲノムの進化を通じて生物の進化と系統を学ぶ。
第15週 Ⅹ.生物の進化と系統(2)[藤田至彦]
人類の起源・進化を学ぶ。

テーマ毎に設定された行動目標から学ぶべき事柄を理解した上で、講義プリント・教科書の該当箇所を熟読する。講義プリントのプレ・テストを、講義日程に連動させて実施する。プレ/ポスト・テストについては、学習前と学習後のそれぞれにおける習熟度を測定することで、各自の理解度の判断材料(ポスト・テスト:形成評価)とする。各テーマについて、最低でも各30分の予習・復習が必要である。
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