2018年度シラバス
学部・学科の教育方針/カリキュラムツリー等へのリンク
科目名
機能Ⅱ
シラバスNO
1811900020
担当教員
梶 博史,河尾 直之,辰巳 公平,石田 昌義,髙藤 義正,上嶋 繁,栗田 隆志,岡田 清孝,賴 晋也,森田 啓之
開講年次
2年次
単位
125時間
開講期
分野
科目区分
専門科目
必修選択の別
必修科目
英文科目名
備考
授業概要・方法等
1. 機能IIでは、生理学のうち、心臓・循環器系、内分泌系、腎・尿路系、血液系の分野を習得する。正常な機能を学び、臨床に直結する病態生理も学んでいく。臨床医学の学習に直結する生理学を習得することを目標とする。
2. 一般的な講義形式の授業や実習に加えて、学習の動機・印象付け、問題抽出・解決能力の涵養、自己学習・討論の習慣が身に付くようにテュートリアル (Problem-Based Learning)、発表・討論、演習(相互学習)とQ&Aなどの学生参加型の授業を設ける。
3. 講義内容には、生理学・病態生理の習得を効果的にするために、臨床医学の疫学・診断・治療の内容も含まれる。また、正常な解剖・組織、生化学・分子生物学、薬理学の内容も学習の効果を促進する範囲内で解説する。
4. 主に再生機能医学の教員が講義を行うが、一部の講義では臨床系の心臓血管センター・血液内科の教員や学外講師による講義を行う(ユニット責任者も臨床系教員出身である。)。
5. 主としてパワーポイントスライドを用いて講義を行うが、併せて授業内容を要約した資料を配布する。資料はあくまでも講義の参考資料であり、講義内容を網羅するものではないことを留意する。講義を聴講することにより、学習のポイントを把握し、ノートをとることを推奨する。また、講義内容には一部最新トピックスや臨床医学・他の基礎医学分野の内容を含むため、講義内容全てが必ずしも試験の出題項目ではないことに注意が必要である。本試験については、生理学・病態生理の内容を中心に出題する。
5. 学生からの質問は随時受け付けるが、学生がより積極的に質問できる時間としてQ&Aやオフィスアワーを設ける。それ以外の時間も積極的な質問を推奨する。
6. 講義内容の理解状況を確認するための小テスト(毎週)、Unit終了後の総括的評価のための本試験を行い、カリキュラムの習得度を評価する。
7. 実習とテュートリアルについては、出席とレポート提出は必須である。
8. 生理学は、臨床医学を学習するための基礎学問としてきわめて重要である。教育内容の丸暗記ではなく、理論的に理解することを心がけて学習する必要がある。
9. 本試験で合格点を得るのに必要な学習のためには、簡易な参考書やプリント、過去問のみの学習では不充分である。理論的に理解するためには、講義と併行してしっかりした教科書を読んで復習し、学習する必要がある。教科書はユニットが開始するよりも、できるだけ早期に購入しておくことが望ましい。
10. 小テストは講義の習得度を評価するための形成試験であり、講義を聴講することにより習得できる範囲の選択式試験とする。
学習・教育目標及び到達目標
対応ディプローマポリシー
 医学知識と技能の修得 (DP1)
 自ら問題を解決する積極的な態度 (DP2)

対応教育アウトカム
【医学的知識】
【自律的継続的学習能力】
【課題解決能力】

キーワード
 生理学、循環器、内分泌、腎臓、血液

上記の関連教育アウトカムを達成するため、下記項目を学習・教育目標とする。
1. 循環系における心臓の役割を学習し、心臓のポンプ作用を理解する。
2. 循環系がどのようなメカニズムで恒常性を保っているのかを学習し、血圧、循環血液量の調節機構を理解する。循環系の恒常性が破綻した際の病態生理を理解する。
3. 内分泌系の臓器から分泌されるホルモンの種類とその生理作用および関連した病態生理を学習し、恒常性を維持するためのホルモン分泌調節機構について理解する。
4. 腎臓での糸球体や尿細管の機能による尿産生のしくみと体液の恒常性維持機構を学習し、多彩な腎機能について理解する。
5. 血液の組成とその生理的意義を学び、血液の流動性の保持および止血の生理的メカニズムを理解する。

上記の学習・教育目標の到達レベルを知るための具体的な目標を以下に示す。
1-1.心臓と循環系の構造と機能の関係を説明できる。
1-2.心筋の興奮収縮連関について骨格筋・平滑筋と対比して説明できる。
1-3.律動的な洞調律の発生メカニズムを説明できる。
1-4.刺激伝導系の略図を描き、それぞれの生理的役割について説明できる。
1-5.心周期について説明でき、心音との関連を理解する。
1-6.正常心電図の成立機序を理解し、心電図の記録とその解析ができる。
1-7.血圧、血流、血管抵抗との関係を説明できる。
1-8.心臓のスターリングの法則について説明できる。
1-9.心拍出量曲線と静脈還流量曲線及び圧容量曲線を描き、それぞれの曲線の調節機構について説明できる。
1-10.心拍出量の調節メカニズムと心不全の病態生理について説明できる。
1-11.冠循環の特徴と病態生理について説明できる。
1-12.組織修復機構、再生の3要素、幹細胞について説明できる。
2-1.動脈と静脈の生理的役割、相違を説明できる。
2-2.毛細血管に作用する力を知り、物質交換の原理を説明できる。
2-3.末梢組織での体液の移動を説明できる。
2-4.浮腫の病態生理を説明できる。
2-5.血圧測定法の原理と方法について説明できる。
2-6.血圧調節機構(短期、中期、長期的調節機構)を説明できる。
2-7.循環系の局所性、神経性、内分泌性調節を説明できる。 
2-8.運動時の循環調節について説明できる。
2-9.血圧異常および循環性ショックの病態生理について説明できる。
2-10.特殊な局所循環(脳・腹腔・皮膚・胎盤循環)について説明できる。
3-1.ホルモンの種類を構造、作用機構、調節機構の観点から説明できる。
3-2.ホルモンのフィードバック制御について説明できる。
3-3.視床下部ホルモンの種類、調節機構について説明できる。
3-4.下垂体前葉・後葉ホルモンの調節機構、生理作用、病態生理について説明できる。
3-5.甲状腺ホルモンの産生、調節機構、生理作用、代謝、病態生理について説明できる。
3-6.カルシウム代謝調節ホルモンの産生・調節機構、生理作用、病態生理について説明できる。
3-7.骨形成・吸収機構と骨代謝調節、病態生理について説明できる。
3-8.副腎皮質ホルモンの産生・調節機構、生理作用、病態生理について説明できる。
3-9.副腎髄質ホルモンの産生・調節機構、生理作用、病態生理について説明できる。
3-10.膵臓から分泌されるホルモンの生理作用、血糖の調節機構、病態生理について説明できる。
3-11.卵巣、精巣、胎盤から分泌されるホルモンの調節機構、生理作用について、性周期・妊娠・出産と関連づけて説明でき、その病態生理を理解する。
4-1.ネフロンおよび尿路の構造について説明できる。
4-2.腎糸球体濾過量、腎血漿流量とその調節について説明できる。
4-3.クリアランスの概念と腎機能異常の病態生理を説明できる。
4-4.尿細管での電解質・糖・酸・塩基の再吸収・分泌のメカニズムとその調節機構について説明できる。
4-5.尿濃縮機構や腎の対向流理論と体液・浸透圧調節機構を説明できる。
4-6.酸・塩基平衡調節機構について説明できる。
4-7.排尿機構について説明できる。
5-1.赤血球の成熟過程とその生理的作用を説明できる。
5-2.造血過程における鉄代謝を説明できる。
5-3.白血球の種類・分化機構とそれぞれの生理作用を説明できる。
5-4.血小板の分化機構と生理作用を説明できる。
5-5.止血反応の生理学的メカニズムを説明できる。
5-6.血液凝固線溶系を説明できる。
5-7.貧血、止血異常、白血球異常の病態生理について説明できる。
5-8.血液型の概念および血漿蛋白について説明できる。
成績評価方法および基準
本試験、実習、テュートリアル(本試験の比率は70%以上とするが、内容の9割程度は記述式とする。本試験および評価は、心臓・循環器系と血液・内分泌・腎・尿路系の2回に分けて行う。) 95%
小テスト 5%
試験・課題に対するフィードバック方法
実習レポートはユニット期間内にコメント等を記載して返却する。
小テスト終了後に模範答案を講義室に掲載する。
本試験の模範答案は公開しないが、過去問を使用した理解の難しい重要項目に関する課題演習を週1〜2回行う。
教科書
[ISBN]9784260017817 『標準生理学 (Standard textbook)』 (医学書院 : 2014)
参考文献
[ISBN]9784784931804 『カラー図解 人体の正常構造と機能 全10巻縮刷版【電子書籍つき】』 (日本医事新報社 : 2017)
[ISBN]9784860349066 『コスタンゾ明解生理学』 (リンダ・S.コスタンゾ, エルゼビア・ジャパン : 2007)
[ISBN]9784860347741 『ガイトン生理学 原著第13版』 (アーサー・C. ガイトン, エルゼビア・ジャパン : 2018)
[ISBN]9784895927208 『ハーバード大学テキスト 血液疾患の病態生理』 (メディカルサイエンスインターナショナル : 2012)
[ISBN]9784895928915 『ハーバード大学テキスト 心臓病の病態生理 第4版』 (メディカルサイエンスインターナショナル : 2017)
関連科目
機能I (生理学)、人体構造I (解剖学・組織学)、人体構造II (解剖学・組織学)、生化学、分子生物学、薬理学、臨床各論I (内分泌代謝内科学)、臨床各論II (循環器内科学、腎臓内科学、泌尿器学)、臨床各論IV (血液内科学)、臨床各論V (整形外科学)、臨床各論VI (産科婦人科学)
授業評価アンケート実施方法
実施規定に準拠して実施する。講座独自の無記名アンケートをユニット中に2回実施する。
研究室・メールアドレス
研究棟6階 再生機能医学教室・saiseiri@med.kindai.ac.jp
オフィスアワー
月曜 PM5-6時
授業計画の内容及び時間外学修の内容・時間
1 総論:心臓・循環系の構造と機能の関連、心臓・循環系のアウトライン、重要な心臓・循環器系疾患の概念
2 心臓、脈管の構造:肺循環と体循環、心臓弁の構造、脈管の種類・構造
3 興奮収縮連関:心筋の活動電位発生とイオンチャネル、心筋の収縮過程、基本的な不整脈の病態生理
4 刺激伝導系:心筋細胞の特徴、心臓の刺激伝導系、洞房結節と房室結節、生理的調節と病態生理
5 心周期:周期的な圧・容積変化と弁の開閉の関係、心音
6 心電図の成立機序と異常:心電図の概念、導出方法、各波形の発生機序、心電図と不整脈の関係
7 血行力学:血圧、血流、血管抵抗の関係、循環各部の血圧の違い、ポアズイユの法則
8 心血管と内分泌系:循環調節におけるレニン-アンジオテンシン系、抗利尿ホルモン、カテコールアミンの役割
9 心拍出量と静脈還流量:心拍出量と静脈還流量の調節機構
10 心不全:心不全時の急性・慢性代償機構、心不全の心拍出量・静脈還流量曲線を用いた理解、各種心不全の病態生理、心不全の治療と薬理
11 冠循環の調節:冠動脈の解剖、冠循環の特徴、冠循環の調節、虚血性心疾患の病態、虚血性心疾患の治療
12 再生医学:再生の3要素、幹細胞、種々の再生医療、再生医療等安全性確保法、再生医療の課題
13 短期的血圧調節:圧受容器反射、化学受容器反射による血圧調節機構
14 中期的血圧調節:レニン-アンジオテンシン系、バソプレシンによる血圧調節機構
15 長期的血圧調節:腎体液性調節機構、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系
16 血管の機能:血管の伸展性、静脈、毛細血管の機能、血管運動の調節
17 圧容量曲線:圧容量曲線と心周期、前負荷と後負荷、病態の圧容量曲線による解析
18 血圧異常:高血圧、低血圧の診断と病態生理
19 末梢循環リンパ:毛細血管に作用する力、末梢組織での体液の移動、浮腫の病態生理
20 局所循環調節-1:脳循環、腹腔循環
21 心臓循環器系の調節:心拍出量曲線と静脈還流量曲線、心収縮の指標、圧受容器反射の解析
22 循環性ショック:循環性ショック時の循環動態、神経性ショック、アナフィラキシーショック、敗血症性ショック
23 運動と循環:運動時の循環系の変化とエネルギー代謝
24 局所循環調節-2:皮膚循環と体温調節、胎児循環
25 内分泌系総論:ホルモンの種類、作用・調節機構
26 視床下部・下垂体:視床下部ホルモン、下垂体前葉、後葉ホルモンの作用・調節機構と病態生理
27 生殖・性腺:女性の性周期、精巣ホルモンと卵巣ホルモン、妊娠・出産時の性ホルモンの機能
28 カルシウム代謝:カルシウム代謝調節機構、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、活性型ビタミンDの作用・調節機構と病態生理
29 骨代謝:骨リモデリング、骨形成・骨吸収機構と病態生理
30 膵臓:インスリン、グルカゴンの作用・血糖調節機構と病態生理
31 副腎:副腎皮質、髄質ホルモンおよびカテコールアミンの合成・分泌経路・生理作用と病態生理
32 甲状腺:甲状腺ホルモンの合成・分泌調節機構と病態生理
33 エネルギー代謝・アディポカイン:トピックス
34 マイオカインとオステオカイン:トピックス
35 骨軟骨再生:骨・軟骨の修復・再生機構、トピックス
36 内分泌演習:内分泌疾患における病態生理・課題演習
37 宇宙医学:微小重力が循環系、筋、骨に及ぼす影響、トピックス
38 腎・尿路系の構造:腎臓、尿管・膀胱の解剖・構造
39 糸球体機能:腎血漿流量、腎糸球体濾過量、糸球体の腎糸球体濾過量調節
40 排尿機能:膀胱の構造と機能、蓄尿反射、排尿反射、神経因性膀胱
41 糸球体の病態生理:腎機能の評価法、腎機能異常や腎不全の病態生理
42 尿細管機能:尿細管の電解質調節機構、糖・尿素・尿酸の再吸収機構、病態生理
43 体液・浸透圧調節:体液量の調節、尿の希釈・濃縮機構
44 酸塩基平衡の調節:重炭酸緩衝系、腎における酸塩基平衡の調節機構、アシドーシスとアルカローシス
45 その他の腎機能:レニン、エリスロポエチン、ビタミンD 
46 赤血球:赤血球の成熟過程と機能、ヘモグロビンの分解
47 止血機構:止血機構、血小板の機能、血液凝固線溶系
48 鉄代謝:鉄の機能と代謝
49 線溶系トピックス 
50 血球の分化:造血幹細胞の機能と特性、血球系細胞の分化過程
51 白血球:白血球の分化・成熟過程、種類、機能
52 マクロファージ:トピックス
53 血漿蛋白:血漿蛋白の種類と機能
54 血液型:ABO式、Rh式血液型
55 血液疾患病態生理:貧血、白血病、止血異常の病態生理
56 血液トピックス:血友病と再生医療
実習
心電図変化、心音、血圧調節、血糖調節、尿濃縮機構、赤血球数・ヘマトクリット測定と血液凝固機能検査に関する実習を行う。

授業時間外に必要な学修
予習内容:シラバスや教科書を参照し、学習すべきポイントを整理する。(30分/日) 
復習内容:教科書「標準生理」や配布プリントを読み返し、講義内容について復習し、理論的に理解する。(2時間/日) 疑問点は、教員に質問する。

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