2018年度シラバス
学部・学科の教育方針/カリキュラムツリー等へのリンク
科目名
細胞・形態学
シラバスNO
1811900075
担当教員
松田 学,後藤 敏一,高村 史記,塚本 徹雄,宮澤 正顯
開講年次
1年次
単位
90時間
開講期
前期
分野
科目区分
基礎科目
必修選択の別
必修科目
英文科目名
備考
授業概要・方法等
細胞は生体の基本単位であり、人体も病原体も食物も細胞もしくは細胞様の物質から成り立っている。細胞の種類と個性を理解すること、細胞を構成するパーツを理解すること、細胞がつくりあげる組織・器官を理解すること、そしてそれらが相互にはたらきあってつくられるネットワークを理解することは、医学を学ぶ上では必須の項目である。本科目では、講義形式で細胞、組織、器官、器官系の構成と形態、機能とその特性を中心に概説し、また実習形式で実際の細胞や組織に触れて興味の醸成と知識の定着を図る。別科目「生命科学」と併せて、医学基礎科目を学習する上での基盤となる生物学・生命科学の知識と素養および骨太な学習姿勢を学生に身につけてもらうことが、本科目の最大のミッションである。
生物学のバックグラウンドに関して学生間に大きな開きがあることを踏まえ、まずは高校生物のリメディアルを含めた基礎的内容に関して、学生全員が体系的な枠組みを把握することを目指す。つぎに、代表的な細胞や組織あるいは情報伝達経路などに関し、主要な少数のトピックを取り上げ、少し深く掘り下げて紹介する。そして、それを思考の足がかりとして、関連する他のトピックに触れても自考自調により理解を深められる状態としたい。講義および実習時間内に定着できる知識量は限られるため、自学自習を強く促す。
少人数のグループをつくり議論しながら学び合う環境の醸成にも注力するが、観察やレポート作成は個人単位で行う。質問はオフィスアワーに限らず、適宜受け付ける。なお、学生の授業内容の理解度を確認するため、また、地道で継続的な学習を奨励するため、講義時間内に小テストを数回実施する。全講義終了後に定期試験を実施し、カリキュラムの習熟度を評価する。
学習・教育目標及び到達目標
関連ディプロマポリシー
 ①医師になるために必要な医学の知識と技能を修得し、さらに日々向上に努めること。
 ②積極的に課題に取り組み、さらに自ら問題点を見いだし解決する姿勢を身につけること。

関連教育アウトカム
 ①医学的知識
 ②自律的継続的学習能力
 ③問題解決能力と医学研究への連結

一般目標(GIOs)
生命の基本単位である細胞が備える構造と機能を理解する。光学顕微鏡による組織像および電子顕微鏡による細胞像を見て、構造を理解できるようになる。複数の細胞によって構成される組織や器官の構造と機能を学び、機能を支える構造の必然性を理解する。また器官同士の連携と、それを支える情報伝達のしくみを理解した上で、主要な分子の正常機能・構造・生化学的特性を学ぶ。さらに、機能分化した細胞を生じる発生のしくみを理解する。これら人体の正常構造と機能を学ぶことにより、将来、ヒト疾患の発症機序と病因・病態を理解するための基礎知識と思考力を身につける。また、ヒトの病原体や食物となる生物や非生物の構造と機能についても学習する。一方、実験動物取扱いに向けた安全教育も実施する。

行動目標(SBO)
 1.生物と細胞の起源について生物学的な議論ができる
 2.原核細胞と真核細胞の共通点と相違点について例を挙げて説明できる。
 3.動物細胞と植物細胞の共通点と相違点を説明できる。
 4.真核細胞の細胞小器官の種類と機能の概要を説明できる。
 5.細胞内共生説について例を挙げて説明できる。
 6.光学顕微鏡のポテンシャルを最大限引き出して自在に利用できる。
 7.電子顕微鏡の原理を知り、ヒトの代表的な細胞の写真から微細構造をイメージできる。
 8.組織標本の代表的染色法と特性を理解し、プロトコールをもとに実践できる。
 9.細胞骨格の種類と特徴を概説できる。
 10.細胞外基質の代表例を挙げて、構造を説明できる。
 11.細胞接着と細胞運動を生じる分子的なしくみを概説できる。
 12.細胞間の情報伝達のしくみを概説できる。
 13.細胞-組織-器官-器官系といった生体の階層構造を、各器官系について説明できる。
 14.ヒトの代表的器官について組織切片の光顕画像をもとに、上皮・神経・筋・結合組織の4組織に色分けし、機能を説明できる。
 15.上皮組織の種類と特性を説明できる。
 16.横紋筋の単位構造をもとに、筋収縮のしくみを説明できる。
 17.神経の情報伝達のしくみとグリア細胞の働きを概説できる。
 18.心臓の構造と、心拍を生じるしくみを概説できる。
 19.動脈、静脈、毛細血管の構造を説明できる。
 20.肺におけるガス交換と、血液によるガス運搬のしくみを概説できる。
 21.消化管における消化と吸収のしくみの概要を説明できる。
 22.腎臓における尿生成のしくみと、浸透圧調節の重要性を説明できる。
 23.感覚受容器の構造と感覚受容のしくみを概説できる。
 24.代表的な内分泌器官をあげ、分泌されるホルモンのはたらきを言える。
 25.体液組成および細胞内液の概要を説明できる。
 26.血球の種類と機能と分化系譜を簡潔に説明できる。
 27.配偶子形成のしくみ、性周期を生じるしくみ、受精のしくみを簡潔に説明できる。
 28.モデル動物の発生を例に用いながら、ヒトの初期発生の過程を、順序立てて説明できる。
 29.幹細胞から特定の細胞が分化するしくみを、例を挙げて説明できる。
 30.性分化が起こるしくみを説明できる
 31.ヒトに備わる生体防御のしくみの理解をもとに、アレルギーやワクチンといった免疫系が関与する異常や医療について説明できる。
 32.再生医療の現状と将来展望を語ることができる。
 33.生物の系統樹と、その中でのヒトの生物学的な位置付けを説明できる。
 34.ヒトの進化について議論できる。
成績評価方法および基準
定期試験(ヒトおよび病原体を中心として、その細胞、組織、器官、器官系の構造と機能に関する理解度を総合的に評価する) 75%
小テスト(各単元ごとの知識の定着度を評価する) 10%
実習レポート(実習課題の達成度と、観察力、情報検索能力、考察力、プレゼンテーション能力を総合的に評価する) 10%
口頭試問(講義や実習中のディスカッションを通じて、学習姿勢と知識に裏付けられた論理的コミュニケーション能力を評価する) 5%
試験・課題に対するフィードバック方法
定期試験:試験終了後試験の要点と解説を学内掲示板に掲示するかメール配信する。必要に応じ、成績不良者を対象に補講を実施して、知識の定着を図る。
小テスト:採点後、答案用紙を返却する。必要に応じて講義時間内に総評と解説の時間を設ける。
実習レポート:採点後に総評および必要に応じ個別のコメントを付して各自に返却する。
教科書
[ISBN]9784524216178 『入門組織学』 (牛木辰男, 南江堂 : 2013)
[ISBN]9784524261994 『Essential細胞生物学(原書第4版)』 (南江堂 : 2016)
[ISBN]9784784931804 『カラー図解 人体の正常構造と機能 全10巻縮刷版【電子書籍つき】』 (日本医事新報社 : 2017)
参考文献
[ISBN]9784524269716 『組織細胞生物学(原書第3版)』 (南江堂 : 2015)
[ISBN]9784895928052 『ギルバート発生生物学』 (メディカルサイエンスインターナショナル : 2015)
関連科目
生命科学
人体構造Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ
人体機能Ⅰ、Ⅱ
医用化学
生化学
分子生物学
授業評価アンケート実施方法
実施規程に準拠して行う
研究室・メールアドレス
進学棟2階・matsudam@med.kindai.ac.jp
オフィスアワー
火、水曜 17-18時(その他の時間も可能な限り随時対応可)
授業計画の内容及び時間外学修の内容・時間
第1回      細胞
4/10(火)1限(松田)
①ガイダンス 
②生物とは何か?  
4/11(水)3-4限(松田)
③真核細胞と原核細胞の構造 
④セントラルドグマに関わる細胞小器官 
⑤細胞内共生
⑥実験動物の安全取扱
予習内容:Essential 細胞生物学 第1章(pp. 1-38) を読み、わからない語句をリスト化する。(30分)
復習内容:講義内容の復習:講義内容を見直し、理解が不確かな点をクラスメートに尋ね、それでも不明な点や興味をもった点を自考自調し、教員に尋ねる。(以下の回も同じ)(60分)

第2回      細胞の観察
4/17(火)1限(松田)
①顕微鏡による細胞組織観察法
②組織固定染色法 
③実習ガイダンス
4/18(水)3-4限(松田,後藤,高村, 塚本, 宮澤)
③(実習)光学顕微鏡の使用法の実際
④(実習)光学顕微鏡でみる細胞
⑤(実習)レポートの書き方
予習内容:実習書を読み概要を理解する(30分)
復習内容:講義内容の復習およびレポート作成。(60分)

第3回      細胞のかたちと運動
4/24(火)1限(松田)
①微小管と微小線維および中間径線維
②モータータンパク質と輸送
③細胞接着
4/25(水)3-4限(松田)
④筋収縮
⑤細胞外基質
⑥細胞運動
予習内容:入門組織学 1章2章と3章第1節(pp. 1-36)
Essential細胞生物学第17章(pp.565-601)(30分)
復習内容:講義内容の復習(60分)

第4回      組織学入門の総論
5/1(火)1限(松田)
①上皮組織
②組織観察ガイダンス
5/2(水)3-4限(松田)
③神経系の構成と神経組織
④筋組織の種類と構造
【小テスト第1-3週「細胞」】
予習内容:入門組織学 3章第2-3節(pp.36-44)5-6章(pp. 69-101)
Essential細胞生物学第20章(pp.683-704)(30分)
復習内容:講義内容の復習(60分)

第5回      器官系の構成と機能(1)
5/8(火)1限(松田)
①結合組織
5/9(水)3-4限(松田)
②脈管系
③血液循環
④呼吸器系
予習内容:入門組織学 4章(pp.45-67)7章(pp. 103-118)11章(pp.199-210)(30分)
復習内容:講義内容の復習(60分)

第6回      器官系の構成と機能(2)
5/15(火)1限(松田)
①消化管
5/16(水)3-4限(松田)
②消化器系の付属腺
③泌尿器系
予習内容:入門組織学 10章(pp.147-198)12章(pp. 211-226)(30分)
復習内容:講義内容の復習(60分)

第7回      上皮組織
5/22(火)1限(松田)
①皮膚
②組織観察とスケッチの要点
【小テスト第4-6週「組織学序論」】
5/23(水)3-4限(松田,後藤,高村, 塚本, 宮澤)
③(実習)代表的な上皮組織の観察
予習内容:入門組織学16章(pp.295-318)(30分)
復習内容:講義内容の復習と観察レポート作成(60分)

第8回      神経と筋組織
5/29(火)1限(松田)
①リンパ系器官
②筋・神経・結合組織観察の要点
5/30(水)3-4限(松田,後藤,高村, 塚本, 宮澤)
③(実習)代表的な筋組織の観察
④(実習)代表的な結合組織の観察
予習内容:入門組織学9章(pp.133-146)(30分)
復習内容:講義内容の復習と観察レポート作成(60分)

第9回      血球と免疫系
6/5(火)1限(松田)
①体液と血液
②血球の種類と分化
6/6(水)3-4限(松田,後藤,高村, 塚本, 宮澤)
③(実習)血球の観察
④(実習)内分泌器官やリンパ組織の観察
予習内容:入門組織学8章(pp.119-132)(30分)
復習内容:講義内容の復習と観察レポート作成(60分)

第10回     情報の受容と伝達
6/12(火)1限(松田)
①細胞間の情報伝達
②細胞内の情報伝達の例
③感覚器:視覚
6/13(水)3-4限(松田)
④感覚器:機械受容と化学受容
⑤ホルモン
予習内容:入門組織学 15章(pp.267-294)17章(pp.319-350)(30分)
復習内容:講義内容の復習と観察レポート作成(60分)

第11回     有性生殖と初期発生
6/19(火)1限(松田)
①卵巣・精巣の構造
②性周期とホルモン
6/20(水)3-4限(松田)
③受精
④卵割と初期発生
⑤細胞の分化
【小テスト第7-10週「組織と情報」】
予習内容:入門組織学13-14章(pp.227-266)
Essential細胞生物学第20章(pp.705-712)(30分)
復習内容:講義内容の復習(60分)

第12回     個体の発生
6/26(火)1限(松田)
①モデル動物の胚発生
6/27(水)3-4限(松田・後藤)
②(実習)受精と卵割の観察(ウニ)
③(実習:Optional)盤割と胚発生の観察(鶏卵)
予習内容:実習書を読み理解する(30分)
復習内容:講義の復習とレポート作成(60分)

第13回     実験形態学と組織再生
7/3(火)1限(松田)
①後期発生
7/4(水)3-4限(松田)
②性の分化
③組織再生と再生医療
予習内容:別途指示(30分)
復習内容:講義内容の復習(60分)

第14回     高次情報処理_免疫と脳
7/10(火)1限(宮澤)
①免疫学序論
7/11(水)3-4限(松田)
②脳の構造と機能
③脳を調べる技術
予習内容:人体の正常構造と機能 7章(pp.502-535)9章(pp.574-652)(30分)
復習内容:講義内容の復習(60分)

第15回     ヒトの進化的歴史
7/17(火)1限(宮澤)
①ヒトの進化的歴史
7/18(水)3-4限(松田)
②比較動物学と脊椎動物の進化
③全体総論
【小テスト第11-14週「発生と分化」】
予習内容:別途指示(30分)
復習内容:講義内容の復習(60分)

本試験(定期試験)
本講義および実習の全範囲
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