2019年度シラバス
科目名
医用化学
シラバスNO
1911900008
担当教員
梶 博史,岡田 清孝,松村 治雄
開講年次
1年次
単位
60時間
開講期
前期
分野
科目区分
基礎科目
必修選択の別
必修科目
英文科目名
備考
授業概要・方法等
自然界にある物質は、基本的に分子あるいは原子により構成されている。医学の分野で扱う人体や微生物も例外ではない。化学は、分子や原子の構造と性質、およびその変化を扱う学問であるが、研究対象により物理化学、無機化学、有機化学などに分けられる。生物を構成する物質やそれらの生体内での変化(代謝)を研究する生化学や遺伝子の作用を扱う分子生物学なども分子を研究対象にしており、広い意味では化学の一分野である。医用化学では、生化学をはじめとする基礎医学や様々な臨床医学を学ぶために必要な化学の基礎を学ぶ。
 大半の学生は、高校で化学を勉強し入試科目として選択している。医用化学では、それらをふまえながら受験目的の知識を主とした化学とは異なり、化学を論理的に理解し、そこから物事の現象について化学的な考え方ができるようになることを目指す。講義は、学生が受け身ではなく、自ら参加し、学びことを主体にした学生参加型のアクティブ・ラーニング形式で行う。それぞれのテーマに対して、まず考え、そこから発生した疑問点を学生同士で討論し、場合によっては発表会などを取り入れ、その疑問を学生自ら解決するような講義形態で行う。前半は、電子の軌道や原子・分子、さらには物質の結合様式、反応性などの無機化学の範囲を医学的なベースで学び、4項目の化学実習をはさんで、後半は医療高分子化学さらには生体を構成する有機化合物の構造や反応性を扱う有機化学の範囲を学ぶ。このコースを通して、これから医学を学んでいくうえで「自ら学ぶ」という基本的な体制を築き、将来医師として医学に携わる上で重要な化学的な知識やその考え方を学ぶ。
 講義・実習の注意点は、以下のようである。
1. 講義は、主として指定教科書に準じパワーポイントスライドを用いて行う。併せて講義内容を要約した資料 を配布する。資料は、あくまでも講義の参考資料であり、講義内容を網羅するものではないことを留意す  る。講義を聴講することにより、学習のポイントを把握し、ノートをとることを推奨する。また、講義内容 には、一部教科書に含まれない化学に関わる最新トピックスや基礎医学、臨床医学分野の内容を含むため、 配布資料や後の復習で確認することをすすめる。一部の講義では、課題に対して討論会や発表会を行う。
2. 実習は、事前の実習講義で配布する実習書に従い、4項目を4週間にわたり4分割して行う。また、出席と レポート提出は、必須とする。実習終了後、各実習の結果の解析と考察について発表会を行う。
3. 本試験で合格点を得るのに必要な学習のためのには、簡易な参考書や配布資料、過去問題のみの学習では不 十分である。論理的に理解するためには、講義と併行して十分教科書を読んで復習し、学習する必要があ  る。
4. 小テストは、講義の習得度を評価するための形式試験であり、講義を聴講することにより習得できる範囲の 選択式試験とする。
アクティブ・ラーニングの形態
実験・実習科目・ディスカッション、ディベート・グループワーク・プレゼンテーション
ICTを活用したアクティブ・ラーニング
自主学習支援(e-learning等を活用)
使用言語
日本語
学習・教育目標及び到達目標
関連ディプロマポリシー
 ①自ら問題を解決する積極的な態度(DP2)
 ②医学知識と技能の習得(DP1)
 ③協調精神とチーム医療(DP4)

関連教育アウトカム
 ①自律的継続的学習能力
 ②医学的知識
 ③課題解決能力と医学研究への連結
 ④コミュニケーション能力

キーワード
 医化学、無機化学、有機化学、高分子化学、環境化学

上記の関連教育アウトカムを達成するため、下記項目を学習・教育目標とする。
 1. 生体を構成する元素の役割を学習し、医学における化学の重要性を理解する。 
 2. 原子・元素・分子・電子や生体内での化学反応を学習し、無機化学の基本を理解する。
 3. 化学実験の基本的知識や方法を体験し、化学実験の基本を理解する。
 4. 化学物質や放射線物質の環境への影響を学習し、環境化学の基本を理解する。
 5. 医療に用いられている高分子化合物を学習し、高分子化学の医療応用を理解する。
 6. 生体内における有機化合物の化学反応を学習し、有機化学の基本を理解する。
 7. 生体内における有機化合物の構造や性質を学習し、有機化学物質の構造機能相関を化学的に理解する。
 8. 学習課題や実習課題から問題点を抽出し、自己学習・討論・発表を通して、自ら問題解決を行う能力を身  に付ける。

上記の学習・教育目標の到達レベルを知るための具体的な目標(到達目標)を以下に示す。
 1-1. 生体における各元素の役割について説明できる。
 2-1. 電子軌道について説明できる。
 2-2. 原子・元素・分子について説明できる。
 2-3. 生体物質の分子間力の役割について説明できる。 
 2-4. 生体物質の配位結合とその機能について説明できる。 
 2-5. 水の特性について説明できる。 
 2-6. 体液の構成と機能について説明できる。 
 2-7. 酸・塩基の基本について説明できる。 
 2-8. 体液の緩衝能について説明できる。 
 2-9. 生体における酸化・還元について説明できる。 
 2-10. 化学反応の反応速度とエネルギーについて説明できる。 
 3-1. 化学実験の基本について説明できる。 
 3-2. 化学実験における安全対策について説明できる。 
 3-3. 水溶液の緩衝能について説明できる。 
 3-4. 水溶性ビタミンの定量・定性反応について説明できる。 
 4-1. 化学物質が関係する環境問題について説明できる。 
 4-2. 放射線の医療応用と生体への影響について説明できる。 
 5-1. 高分子ポリマーの構造の基本について説明できる。 
 5-2. 合成高分子物質の医療応用について説明できる。 
 6-1. 有機化合物の表記法と命名法について説明できる。 
 6-2. 生体内の有機化合物の種類と構造について説明できる。 
 6-3. 生体分子における異性体について説明できる。 
 6-4. 生体内における有機反応について説明できる。 
 7-1. 脂質の種類と構造について説明できる。 
 7-2. 生体内における脂質の機能について説明できる。 
 7-3. 細胞膜の化学的構造と機能について説明できる。 
 7-4. アミノ酸の種類と構造について説明できる。 
 7-5. アミノ酸誘導体の構造と機能について説明できる。 
 7-6. タンパク質の構造について説明できる。 
 7-7. 核酸の構造と機能について説明できる。 
 7-8. 糖質の種類と構造について説明できる。 
 7-9. 多糖類の構造と機能について説明できる。 
 7-10. 生体内における糖代謝の化学的見方について説明できる。
成績評価方法および基準
定期試験(記述式問題は全体の8割程度とする。) 80%
学習態度評価(選択式問題の小テストと課題レポートで評価する。) 10%
実習評価(実習レポート評価とキューブリックを用いた実習態度評価で行う。) 10%
試験・課題に対するフィードバック方法
定期試験は期間終了後に要点と解説を補講する。
小テストは模範答案を掲示板に配布する。小テスト1終了後に前半の要点について補講する。
実習レポートは実習終了後の実習講義で解説する。
課題レポートは次の講義で解説する。
教科書
メディカル化学、斉藤勝裕他著、裳華房、 [ISBN]9784785330910 、2015
参考文献
化学 基本の考え方を学ぶ(上、下)、村田滋訳、東京化学同人、 [ISBN]9784807907397、 [ISBN]9784807907403 2010
生命科学系のための物理化学、稲葉章、中川敦史訳、東京化学同人、 [ISBN]9784807908387 、2011
[ISBN]9784274210006 高分子化学、西久保忠臣著、オーム社、2011
バイオマテリアルサイエンス、石原一彦他著、東京化学同人、 [ISBN]9784807905775 、2013
関連科目
生化学、分子生物学、生命科学、細胞・形態学、生理学、薬理学
授業評価アンケート実施方法
医学部実施規定に準拠して行う。
科目独自の記名アンケートを4回実施する。
研究室・メールアドレス
医学部医学基盤教育部門
オフィスアワー
金曜日 16:30-18:00
授業計画の内容及び時間外学修の内容・時間
第1回      イントロダクション
医学における化学の重要性と化学的な考え方、導入試験(化学の基本的知識の確認)(アンケート1)
予習内容:教科書の全体的内容を理解し、医用化学の重要ポイントを抜き出すこと。(60分)
復習内容:講義ノートを読み返し、到達目標の達成状況を確認する。
導入試験の問題について復習する。(120分)

第2回      無機化学1
原子の構造と電子軌道、分子の結合様式と混成軌道、分子間力(課題レポート)
予習内容:教科書の1-3章を読み、分からない語句や理解の困難な箇所を抜き出すこと(60分)
復習内容:講義ノートを読み返し、到達目標の達成状況を確認する。(90分)

第3回      無機化学2
生体における元素の役割(グループ討論と発表)、配位結合、化学反応と速度
予習内容:課題レポートを作製する。教科書の4,7章を読み、分からない語句や理解の困難な箇所を抜き出すこと。(180分)
復習内容:講義ノートを読み返し、到達目標の達成状況を確認する。(90分)

第4回      無機化学3
水の特性と体液、酸・塩基と体液の酸塩基平衡、酸化・還元と生体反応
予習内容:教科書の5,6章を読み、分からない語句や理解の困難な箇所を抜き出すこと。(60分)
復習内容:講義ノートを読み返し、到達目標の達成状況を確認する。(90分)

第5回      実習講義1
化学実習の基本と安全対策、実習内容(小テスト1、アンケート2)
予習内容:無機化学の範囲の小テストに対する勉強を行う。実習書を読み、分からない語句や理解の困難な箇所を抜き出すこと。(360分)
復習内容:実習ノートを読み返し、到達目標の達成状況を確認する。小テストの模範解答を作成し、分からなかっとところを理解する。(120分)

第6回      実習1
1. 水溶性ビタミンの定量と定性実験(A/Bクラス前半)
2. 基本的化学実験操作法、緩衝液の調整法、pHの測定法(A/Bクラス後半)
予習内容:実習書の該当実習項目のページを読み、実習手順を書き出して理解すること。(90分)
復習内容:実習レポートを作製し、到達目標の達成状況を確認する。(360分)

第7回      実習2
1. 水溶性ビタミンの定量と定性実験(A/Bクラス後半)
2. 基本的化学実験操作法、緩衝液の調整法、pHの測定法(A/Bクラス前半)
予習内容:実習書の該当実習項目のページを読み、実習手順を書き出して理解すること。(90分)
復習内容:実習レポートを作製し、到達目標の達成状況を確認する。(360分)

第8回      実習3
3. 医療用高分子ポリマーの合成実験(A/Bクラス前半)
4. 体液性コロイドの化学実験(A/Bクラス後半)
予習内容:実習書の該当実習項目のページを読み、実習手順を書き出して理解すること。(90分)
復習内容:実習レポートを作製し、到達目標の達成状況を確認する。(360分)

第9回      実習4
3. 医療用高分子ポリマーの合成実験(A/Bクラス後半)
4. 体液性コロイドの化学実験(A/Bクラス前半)
予習内容:実習書の該当実習項目のページを読み、実習手順を書き出して理解すること。(90分)
復習内容:実習レポートを作製し、到達目標の達成状況を確認する。(360分)

第10回     環境と化学
地球環境と大気汚染、放射線の医療応用と生体への影響
予習内容:教科書の15章を読み、分からない語句や理解の困難な箇所を抜き出すこと。(60分)
復習内容:講義ノートを読み返し、到達目標の達成状況を確認する。(60分)

第11回     実習講義2
実習結果の解析と考察(発表・討論)
実習項目の解説、高分子化学:合成高分子化合物の医療応用(アンケート3)
予習内容:実習結果の解析と考察についての発表原稿を作成する。参考書の高分子化学の項目を読み、分からない語句や理解の困難な箇所を抜き出すこと。(120分)
復習内容:実習ノートを読み返し、到達目標の達成状況を確認する(90分)

第12回     有機化学1
有機化合物の構造と種類および異性体、有機化学反応)(小テスト2)(課題レポート)
予習内容:教科書の8-10章を読み、分からない語句や理解の困難な箇所を抜き出すこと。実習項目の小テストに対する勉強を行う。(360分)
復習内容:講講義ノートを読み返し、到達目標の達成状況を確認する。(90分)

第13回     有機化学2
脂質:生体における脂質の構造と機能、脂質と細胞膜(課題について発表・討論)
予習内容:課題レポートを作成する。教科書の11章を読み、分からない語句や理解の困難な箇所を抜き出すこと。(180分)(180分)
復習内容:講義ノートを読み返し、到達目標の達成状況を確認する(90分)

第14回     有機化学3
タンパク質:アミノ酸の基本構造と反応性、タンパク質の構造と機能
予習内容:教科書の13章を読み、分からない語句や理解の困難な箇所を抜き出すこと。(60分)
復習内容:講義ノートを読み返し、到達目標の達成状況を確認する。(90分)

第15回     有機化学4
糖質:糖質の基本構造と反応性、多糖類の構造と性質(小テスト3)(アンケート4)
予習内容:実習と有機化学の範囲の小テストに対する勉強を行う。教科書の12章を読み、分からない語句や理解の困難な箇所を抜き出すこと。(360分)
復習内容:講義ノートを読み返し、到達目標の達成状況を確認する。(90分)

定期試験
講義、実習内容全体から出題する。全体の約8割が記述式問題。
ホームページ
実践的な教育内容
経営者、技術者、研究者、行政官等の実務経験がある教員が行う授業