2019年度シラバス
学部・学科の教育方針/カリキュラムツリー等へのリンク
科目名
医物理学
シラバスNO
1911900009
担当教員
稲瀨 正彦,生塩 研一,森内 博正,森 弘之,山崎 篤志,秋山 英三,高瀬 浩一
開講年次
1年次
単位
60時間
開講期
前期
分野
科目区分
基礎科目
必修選択の別
必修科目
英文科目名
備考
授業概要・方法等
本科目では自然科学全般を学ぶ上で基礎となる物理学の思考方法を修得する。物理は公式を暗記して計算問題を解くものと解釈されているケースも少なくない。しかし,物理的な考え方は観察・推論・実験からなる科学的方法の中でも最も基本的なものであり,幅広い学問分野に影響を与えている。汎用性の高い物理的思考法を身につけることは医学生においても有意義である。医学の診断や治療にも物理現象を応用した機器が多用されており,その原理を学ぶことで機器の適正かつ有効な利用法が身につけられる。講義は数式の使用を極力控えた形で進められるので,現象の把握とその理解に重点を置くようにして臨むこと。また,物理学研究の最前線を開拓しておられる他大学の先生から各回読み切りのオムニバス形式で物理の基本的な内容から最新のテーマまで話題を学ぶ。実習では実際の物理現象に触れ,データ取得やデータ解析を通して物理的な考え方を実践的な形で修得する。グループで協力して作業を進めるので,協調性・積極性・自主性を持って参加すること。さらに,表計算ソフトを使用したデータ処理やデータの可視化,簡単な計算を通して物理現象の理解を深める。また,積極的な学生には自己学習した内容をプレゼンテーションする機会を設ける。シラバスに挙げた参考書や各回で紹介される文献で自己学習にも努めることが期待される。
アクティブ・ラーニングの形態
実験・実習科目・ディスカッション、ディベート・グループワーク・プレゼンテーション
ICTを活用したアクティブ・ラーニング
双方向授業(クリッカー、タブレット端末等を活用)
使用言語
日本語
学習・教育目標及び到達目標
関連ディプロマポリシー
1. 自律的学習能力:積極的に課題に取り組み,さらに自ら問題点を見いだし解決する姿勢を身につけること 

関連教育アウトカム
1. 自律的継続的学習能力 
2.課題解決能力

キーワード
物理学,非線形科学,量子力学,放射線医学,表計算ソフト

学習目標
1. 物理的な考え方を修得する。
2. 医療機器に応用されている物理現象を理解する。
3. データの集取・処理・可視化能力を高める。

到達目標
1. 古典的な物理学の基本的な内容を説明できる。 
2. 非線形科学の考え方について例を挙げながら説明できる。
3. 量子力学の考え方について例を挙げながら説明できる。 
4.fMRIなどの医療機器についてその原理を説明できる。
5. 表計算ソフトを使いこなし,データの整理・計算・可視化ができる。
6. グループで協力して実験が進められる。
成績評価方法および基準
授業における学習に取り組む姿勢,意欲,貢献度 50%
各回の課題レポート(理解度,習熟度を評価する。終講時の評価が低い学生に対しては、再試験時にテストを行う。) 50%
試験・課題に対するフィードバック方法
各回のレポート課題は,翌回に解説するとともに模範的なレポートを紹介する。希望者にはレポート(写し)を返却する。
教科書
適宜,プリント配布や参考書を紹介する。
参考文献
[ISBN]4808220725 『医歯系の物理学 <第2版>』 (赤野 松太郎, 東京教学社 : 2015)
関連科目
科学的思考演習,放射線診断
授業評価アンケート実施方法
実施規程に準拠して行う。
研究室・メールアドレス
医学基盤教育部門(進学棟2階)・oshio@med.kindai.ac.jp
オフィスアワー
月・金 16:30〜18:00
授業計画の内容及び時間外学修の内容・時間
第1回      物理学入門
物理学の基礎的な事項について,高校で履修する物理を中心に理解する。少し発展した内容についても考察する。
予習内容:高校の教科書に記載されている内容について幅広く目を通しておくこと。(60分)
復習内容:式を暗記や計算までは必要ないので,授業で解説された内容で現象や物理的な考えを中心に復習すること。(60分)

第2回      電磁気学の概要
電磁気学の現象は医学で使われる装置に応用されているものが多い。電磁気学の基本的な物理量や現象について学習する。また,第3回には電磁気学の実習を行うので,その実習内容についても把握する。
予習内容:電磁気学で特に医学で使われる装置と関連のある現象について予習すること。(60分)
復習内容:講義で解説された現象や医学で使われる装置への応用例について復習すること。(60分)

第3回      微分回路の特性計測実習(実習)
脳波計などに利用されている微分回路の時定数,位相差・振幅比の駆動周波数依存性を実験により調べる。電気機器が発する電磁波・電場・磁場強度の計測も行う。(Bクラスは第4回に実施する)
予習内容:電流の直流・交流,電場・磁場,オームの法則,RC回路,微分回路,積分回路,オシロスコープについて予習すること。(60分)
復習内容:実習で得られたデータの解釈,及び,それらの脳波計や筋電図との関係について考察すること。(60分)

第4回      表計算の基礎(実習)
物理学は数学的表現と親和性が高く,物理現象の理解に数式やシミュレーションが欠かせない。この回ではまず表計算ソフトの基本的な使用法を習得する。(Bクラスは第3回に実施する)
予習内容:表計算ソフト(Excelなど)を試しに使っておく。表計算ソフトやパソコン自体を持っていない場合は,使用法について予習しておく。(60分)
復習内容:実習で行った操作法をもう一度確認しておく。また,それ以外の操作も試みること。(60分)

第5回      非線形現象と量子力学の基礎
第6〜9回では非線形現象と量子力学に関連した話題を外部講師から拝聴する。その予習として,非線形現象と量子力学の基礎的な内容について学習する。
予習内容:非線形性,カオス,光の粒子性・波動性,不確定性原理,シュレーディンガーの猫について予習すること。(60分)
復習内容:授業で紹介する非線形現象と量子力学のいろいろな現象について整理しておくこと。(60分)

第6回      進化とそのダイナミクス〜互恵性の進化の考察
進化ゲームと進化ダイナミクスの基礎を概観し,その応用について,互恵性の進化の話題を中心に考察する。
予習内容:進化論,ゲーム理論,非線形科学,シミュレーション物理学について予習をすること。(60分)
復習内容:いろいろな分野に応用されるゲーム理論について考察を広げ,また,授業で紹介されるシミュレーションを実際に試してみること。(60分)

第7回      現代物理学とその医学への応用〜MRI(核磁気共鳴画像法)を例として〜
古典物理学から原子物理学・量子力学の確立までの流れを概観し,MRIを例に,物理学の医学への応用について学習する。
予習内容:半導体,原子物理学,核磁気共鳴画像法をキーワードとして予習すること。(60分)
復習内容:核磁気共鳴画像法の原理,それからT1強調画像とT2強調画像の違いなどを復習すること。(60分)

第8回      ナノテクノロジーと医療
現代の最先端医療には,物理学がその原理となる様々な医療機器や分析装置が用いられている。この講義では,その幾つかを物理の原理に基づいて学習する。
予習内容:半導体,ナノテクノロジー,ドラッグデリバリーシステム,ハイパーサーミア,表面プラズモンについて予習すること。(60分)
復習内容:ドラッグデリバリーシステムやハイパーサーミアなど,医療に応用されるナノテクノロジーについて整理すること。(60分)

第9回      エントロピーと量子力学
物理学の重要な概念であるエントロピーと量子力学について概観する。講義の前半では世の中のマクロな流れを決めるエントロピー増大則について学習し,後半ではミクロな世界を支配する量子力学の驚くべき性質を学習する。
予習内容:フェルミ粒子・ボーズ粒子,超伝導・超流動,エントロピー,温度の定義,永久機関について予習すること。(60分)
復習内容:授業で学んだ内容を咀嚼し,量子力学の不思議な世界観やエントロピーという物理量についての理解を深めておく。(60分)

第10回     身の回りにあふれる非線形現象
決定論的な規則に従いながらも複雑な振る舞いを示すカオスや分岐現象といった非線形現象について,具体的な現象や計算機シミュレーションを挙げながら学ぶ。また,第11回の音波計測実習の内容を理解する。
予習内容:非線形現象,カオス,フラクタル,分岐現象などをキーワードとして予習すること。音波についても理解しておくこと。(60分)
復習内容:講義で紹介されたカオスやフラクタルの具体例や医学への応用例について復習すること。第11回に実施する音波計測実習の内容と流れを把握すること。(60分)

第11回     音波計測実習(実習)
開口端反射により空気中の音速を計測する。共鳴体を用いて共鳴周波数の共鳴対体積依存性などを調べる。(Aクラスは第12回に実施する)
予習内容:マイクやスピーカーの原理,気体や固体での音速,定在波と共鳴現象について予習すること。(60分)
復習内容:実習で得られた実験データの解釈に努め,また,超音波エコーの仕組みについても考えてみること。(60分)

第12回     データの可視化(実習)
実験で得られたデータをグラフで可視化する手法を物理的なデータを使いながら実践する。簡単な力学モデルによる系の時間発展の様子も簡単なシミュレーションで調べてみる。(Aクラスは第11回に実施する)
予習内容:第4回で扱った表計算ソフトをもう一度使って思い出しておく。また,簡単なデータを作って,それをいくつかのグラフにしてみること。(60分)
復習内容:授業で試したグラフをもう一度作ってみる。また,他のグラフについても作成を試みること。(60分)

第13回     量子力学と生命現象
量子力学について,第5回の基礎的内容,第7〜9回に外部講師から関連する様々な現象を学んだ内容をベースに,最近わかってきた量子力学の生命現象との関わりについて学ぶ。第14回に実施する放射線計測実習の内容について理解する。
予習内容:量子力学についての復習と,生命現象との関わりについて予習しておくこと。(60分)
復習内容:量子力学で考察した生命現象について復習しておくこと。第14回に実施する放射線計測実習の内容と流れを把握すること。(60分)

第14回     放射線の医学的利用,放射線計測実習(実習)
ガンマ線源を用いて,放射線量の距離・遮蔽材の材質・遮蔽材の厚さに対する依存性を調べる。
予習内容:γ崩壊,γ線の性質,原発事故と放射線被害について予習すること。(30分)
復習内容:習で得られた実験データから,線源による放射線量の違い,線源からの距離や遮蔽材の厚さによる放射線量の変化について整理しておくこと。(30分)

第15回     物体の運動,重力加速度計測実習,トポロジー(実習)
力学で重要な定数である重力加速度をボルダ振子振動周期の精密計測から算出する。実験装置の順番待ちの時間を利用して、トポロジーに関する問題をタブレットを利用して解く。
予習内容:自由落下運動と振り子運動について見直しておくこと。トポロジーについて予習しておくこと。(30分)
復習内容:復習内容:実習で得られた実験データについて解釈し,また,この科目全体を通して学んだ物理学的な視点について整理しておくこと。(30分)
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