2019年度シラバス
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科目名
医療イノベーション学
シラバスNO
1911900050
担当教員
後藤 敏一
開講年次
1年次
単位
2単位
開講期
前期
分野
科目区分
共通教養科目
必修選択の別
必修科目
英文科目名
備考
授業概要・方法等
 本科目は、主に大学内外の講師による、持ち回りの講義・演習を中心とした医療イノベーション学のコースである。毎回講義を受け、その講義内容についてレポートをまとめることを基本として学修を進める。講義内容は、医学周辺分野でのイノベーションを軸に、産学連携のトピックスから情報の分析方法まで多岐にわたる。単に講義を聴くという場だけではなく、学生が能動的に考え、それを表現し、また学生同士が討論する場を設ける。
 授業内容に関する学生からの質問は、講義前後や講義中に随時受け付ける。
アクティブ・ラーニングの形態
ディスカッション、ディベート・グループワーク
ICTを活用したアクティブ・ラーニング
-
使用言語
日本語
学習・教育目標及び到達目標
関連ディプロマポリシー
①医師になるために必要な医学の知識と技能を修得し、さらに日々向上に努める。
②積極的に課題に取り組み、さらに自ら問題点を見いだし解決する姿勢を身につける。

関連教育アウトカム
①医学的知識
②自律的継続的学習能力
③課題解決能力と医学研究への連結

 これから6年間にわたる医学部での学修を経て医師となった後も、社会の環境変化に対応しながら自己形成ができることを目指す。本科目の学修を通して、医学分野の内外で起こるイノベーションに関心を寄せ、自ら問題点を見い出し、関連する情報を収集・分析し、考え、何らかの解を見つけ、それを形にしていく力を身につけることが目標である。毎回の話題に関心を持ち、その内容をよく消化して、自分なりのレポートを作成することが求められる。
成績評価方法および基準
授業中の課題に対する取り組み姿勢、討論への参加と貢献度、積極性 50%
課題レポート(授業で学んだ内容の理解度、思考・推論・創造する力を評価する) 50%
試験・課題に対するフィードバック方法
 課題レポートおよび講義におけるディスカッションを受けて、受講生に対して講義内容についての補足や新たに伝えたいことを、随時、UNIPAを通じて配信する。
教科書
指定しない
参考文献
随時紹介する
関連科目
医学から見た現代社会と倫理、グローバルヘルス概論、プロフェッショナリズム
授業評価アンケート実施方法
医学部実施規定に準拠して行う。
研究室・メールアドレス
医学基盤教育部門(後藤敏一;進学棟2階) gotoh-t@med.kindai.ac.jp
オフィスアワー
各授業の前後
火曜日 16:30~18:00(後藤敏一)
上記以外でも可能な場合があります。研究室を訪ねてください。
授業計画の内容及び時間外学修の内容・時間
各テーマについて、シラバスから学修内容を理解しておく。シラバス中に記される専門用語について、予め調べてノートに内容をまとめておく。その際、調べた出典を明記しておくこと。

第1回      今だから言える! 僻地医療からシリコンバレーへの挑戦! 【Fumiaki Ikeno M.D. Stanford Biodesign Medical Director】
デザイン思考を用い革新的な医療機器を生み出し続けるシリコンバレーの発想法がある。シリコンバレーは、世界の医療機器の半分以上がここで生まれると言われている程の医療機器創生先進地域であり、その中心に位置し、人財を提供しているのが、Stanford Universityである。本講演では、演者が、日本において9年間の僻地医療を含む地域医療の末に、シリコンバレーに渡り、Stanford Universityにおいて、サバイバルしている経緯、経験を説明し、そして、医療機器の起業家精神育成講座で教えている発想法/開発手法である「デザイン思考」について、また、これに基づく標準化プログラムとして各国に展開されつつある Bio Design について講義をする。
予習内容:ゼロから1を創り出すには、何より、本人の情熱が重要である。宿題として、講師のTEDxHamamatsuでのYouTubeの講演内容を事前に視聴しておくこと https://www.youtube.com/watch?v=a614BxrK3lM&t=10s(20分)
復習内容:何でもいいから、デザイン思考の本を一冊読破して、感想文を簡単でいいので、記すこと(360分)

第2回      医工連携と人工臓器による在宅医療 【生物理工学部 医用工学科 教授 古薗勉】
「医工連携」とは、医学者と工学者が共同で医療新技術を創出するという意味である。医工連携を背景としたベンチャー企業による事業化、および人工臓器(補助人工心臓や人工腎臓)による在宅医療の最新の動向について講述する。
予習内容:地域包括ケアシステムを主とした在宅医療と人工臓器について予習すること(120分)
復習内容:医工連携のあり方、および在宅医療で用いられる人工臓器の機能や治療法について確認すること(60分)

第3回      革新的新薬創製のためのオープンイノベーションの活用 【塩野義製薬株式会社 坂田恒昭 氏】
近年の製薬業界には二つのキーワードがある。まず一つは「グローバル化」、そして二つ目は「オープンイノベーション」である。このうち、社内外の研究を WIN-WIN の関係で有機的に結びつけようとするオープンイノベーションという概念は、国内の製薬企業にも浸透しつつある。産官学の連携によるオープンイノベーションによるアカデミアの研究シーズの育成は重要である。特に、製薬企業のような事業会社のアカデミアの研究シーズを患者さんに届るためのサポートが、大いに期待されている。
予習内容:病院・医院における患者さんにとっての最適医療とは何かについて予習すること(120分)
復習内容:医薬品の創製と薬価制度の問題点・今後の取るべき施策について確認すること(60分)

第4回      医療における“イノベーションのジレンマ”をネット診察は乗り越えられるか? 【ネクストイノベーション株式会社 石井健一 氏】
2015年の通知によって、我が国におけるネット診察の門戸は実質開かれた。
入院・外来、そして在宅医療と医療を提供する「場所」に広がりが見られる中、ネット診察はそのテクノロジーにおいて医療と患者の新しい関係性を築くことができるのであろうか。
予習内容:国内におけるオンライン診察に関する動向(平成8年通知から直近のものまで)を公開情報を中心に調査する(30分)
復習内容:海外の事情を勘案し、国内におけるオンライン診察の役割・ポジションについて考察(30分)

第5回      医療とAI 〜 AIでがん治療選択はどう変わるのか 〜 【日本アイ・ビー・エム株式会社  川口克己 氏】
本講演では、IBM 自身の経験として AI の基礎研究や社会実験の経緯、ヘルスケア領域で事業化にいたったあゆみを振り返り、どのようにして医療従事者の膨大な医学知識へのアクセス能力を拡張し、医療サービスを提供する医師を支援できるようになっているのか、世界で150を超える医療機関で利活用されているがん診断支援ソリューション Watson for Oncology のライブデモを含め、最先端の話題提供をします。
予習内容:人工知能AIに関する歴史的経緯および基礎知識の習得(インターネット閲覧や書籍購読等)(60分)
復習内容:臨床現場への人工知能AIに関する厚労省主催の有識者会議の議論を確認し、将来の臨床現場の絵姿を想像すること (検索キーワード:保険医療分野AI開発加速コンソーシアム、がんゲノム医療推進コンソーシアム、AIホスピタル 等)(90分)

第6回      再生医療における製品、臨床研究そして自由診療 【順天堂大学大学院医学研究科 神垣 隆 氏】
再生医療分野では、さまざまな研究開発が行われている。本講義では、免疫細胞療法を例に、再生医療関連法の習熟と、薬とは異なる個別化医療としての特性、そしてエビデンス構築のための問題点について学習する。
予習内容:再生医療に関する法律「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」の概要について予習すること(90分)
復習内容:再生医療法の復習と、本邦における医薬品医療機器等法に基づいた再生医療等製品の開発状況について確認すること(60分)

第7回      革新的バイオエネルギーの開発の視点と工学的応用 【バイオコークス研究所 所長/教授 井田民男】
世界総人口が100送任に迫る中、1次エネルギーの争奪が増している。一方、地球温暖化に関する抑止技術開発は遅延し、回復はおろか進行状態にある。ここでは、産業分野における化石資源:石炭/石炭コークスの代替あるいはそれをも超える技術の解発視点と工学応用を講義する。
予習内容:再生可能エネルギーの概要について予習すること(120分)
復習内容:21世紀を切り開くバイオエネルギーについてその役割を纏め、統計社会学に基づく医学との接点を再考し、医学の果たす役割を確認すること(60分)

第8回      医療領域における 新技術の展開 【富士通株式会社 渡邉正宏 氏】
医療に提供する技術の革新が行われている。本講義では近年医療領域でのトライアル活用が進む AI 関連技術、AR/VR 技術、数値シミュレーション技術等について事例を含めて紹介する。
予習内容:現在革新が行われている医療領域の新サービスを、1つ選び、そのシステムやサービスについて、誰がユーザで、何に貢献するのか、考えてみてください。特に、貢献という部分について、よく考えてみてください。(60分)
復習内容:講義でいくつかのシステム、サービスのユーザや貢献の仕方について紹介しました。現在存在しない技術を想定してよいので、今後の新しいシステムやサービスの位置づけを想像し、誰がユーザで誰に貢献するのか考えてみてください。(60分)

第9回      BCG流 病院経営戦略 【ボストンコンサルティンググループ 北沢真紀夫 氏】
医療機関を取り巻く環境は悪化しています。具体的には厳しい診療報酬改定、消費税損税、高額な医療機器・薬剤、患者数が増える中、経営に割ける人材リソースが不足しがちなこと、などです。このように厳しい環境下においても戦略的に病院を経営していく工夫や必要なスキルを習得します。
予習内容:医療・ヘルスケア分野における環境変化について、ニュース、新聞、雑誌などで確認、予習すること(60分)
復習内容:授業で説明した医療・ヘルスケア分野における環境変化やトレンドについて、将来の自身のキャリアへの影響などにつき、考察すること(60分)

第10回     健康なまちづくりと医療福祉建築 【株式会社竹中工務店 斉藤淳一 氏】
健康な生活、そして社会の実現に向けて、『まちづくりや空間づくり』に医療福祉の視点が求められています。国内外の最新事例を通して、こうした視点を学ぶとともに、これからの医療と建築の連携の可能性について考察します。
予習内容:病院建築における部門構成(病棟、外来、中央診療、供給、管理)について分類の概要を予習すること(60分)
復習内容:講義配布のワーク資料を作成することで、医療と建築の連携の可能性をについて考察を深めること(60分)

第11回     医師コミュニティと知識 -新薬普及の事例から- 【経営学部 経営学科 准教授 筒井万理子】
医師というプロフェッショナル集団は、専門知識の創造や共有の母体である。本講義では、新薬の普及過程を注目し、医師たちによる知識の創造、知識の共有について理解を深める。
予習内容:本講義では「イノベーションの普及学」の考え方について予習しておくことが望ましい。例えば手軽に読める資料として、図書館の学内データベース「日経テレコン」より日経流通新聞1994年7月21日から9月6日の期間に掲載された記事「イノベーションの普及(2)〜(15)」がある。(120分)
復習内容:本講義では経営学や商学の用語が多く登場する。講義中に出てきた用語の中で、知らないものがあれば専門用語辞典(経営学用語辞典等)で調べ、理解しておくこと。(60分)

第12回     医療を通じて社会に貢献する 【テルモ株式会社 中神仁志  氏】
「医療を通じて社会に貢献する」という企業理念のもと、患者さんや医療の現場に向けていち早く新たな価値を届るため、世界の絶え間なく変化する社会環境と科学技術の中で、質の高い成長とグローバルでのプレゼンスを向上するための取り組みについて紹介する。
予習内容:病院の中で使用される医療機器にはどのようなものがあるか予習すること(60分)
復習内容:講義の中で出てきた医療機器が使われる場面について確認すること(60分)

第13回     新薬ライフサイクル(新薬の誕生から育薬まで) 肺癌領域における免疫療法+化学療法の併用療法の研究を通じて 【日本イーライリリー株式会社 江夏総太郎 氏】
新薬は、9〜17年の年月を費やし、基礎的な研究から、治験にて有効性や安全性を確認した上で、厚生労働省の認可を受け、ようやく市販に至ります。しかし、新薬の歩みはこの『誕生』がゴールではありません。
誕生の後も、くすりには、より使いやすいものへと成長そして成熟を遂げていくという大切な歩みがあります。この誕生後のくすりの道のりを、くすりを育てるという意味で『育薬』と呼んでいます。
この講義では、新治療として肺癌領域に『誕生』した免疫療法の効果を最大化するための化学療法との併用という更なる研究によって、それまで一部の患者さんにしか効果を発揮できなかった免疫療法が、すべての肺癌患者さんに適応できる新治療へと育っていく『育薬』までの過程を、基礎データから臨床データまで包括的にレビューし、新薬のライフサイクルについて科学的見地から学びます。
予習内容:肺がんの治療について予習すること(60分)
復習内容:授業の内容を振り返り新薬開発のプロセスと、育薬について確認すること(60分)

第14回     医療を取り巻くヘルスケア業界について 【シップヘルスケアホールディングス株式会社 小川宏隆 氏】
医療を取り巻く環境の変化に対応する医療政策の変遷と今後の方向性を踏まえながら、医療・介護を中心とするヘルスケアマーケットの可能性と制約を検証し、医療現場を取り巻くヘルスケア業界をビジネスの視点から分析し、医療経営での協働の可能性と今後の業界内のイノベーションについて考察する。
予習内容:人口構造の変遷と医学の進歩の観点から、これまでの間の医療制度改正の動向について予習すること(120分)
復習内容:医療現場を取り巻く各種企業によるビジネススキームについて確認すること(60分)

第15回     近大から世界へ発信するゲノム創薬研究 〜基礎ゲノム科学研究から先端ゲノム医療への道のり〜 【薬学部 創薬科学科 学科長 杉浦麗子】
近年の医療革命の火付け役となる革新的な技術の多くは、ゲノム科学を基盤とする。本講義では、ゲノム創薬、パーソナルゲノム医療、プレシジョンメディシンなど、ゲノム医療の最新の話題を提供するとともに、近畿大学薬学部創薬科学科で編み出された独創的なゲノム創薬の手法とその研究成果について紹介する。
予習内容:ゲノム医療(特にプレシジョンメディシン)について、ゲノム創薬の手法により開発された新規抗がん剤、分子標的治療薬等について各自で専門書やWebより情報を収集する。(120分)
復習内容:授業配布の演習問題およびその関連領域について自分で新聞やWebサイトより情報を収集する。(60分)
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