2024年度シラバス
学部・学科の教育方針/カリキュラムツリー等へのリンク
科目名
機能Ⅰ
シラバスNO
2411900037
担当教員
梶 博史,河尾 直之,水上 優哉,大平 宇志,有馬 秀二,栗田 隆志,口分田 貴裕,辰巳 公平
開講年次
2年次
単位
100時間
開講期
前期
分野
科目区分
専門科目
必修選択の別
必修科目
英文科目名
Physiology
備考
授業概要
1. 生理学は、生命現象を機能の面から扱う学問である。生理学は臨床医学および医学研究の基礎学問として重要で、狭い意味での生理学では、各臓器のつながりなとど体全体の視点で、各臓器や細胞の機能を対象とする。一方、正常機能が破綻して病気になるメカニズムを病態生理という。機能Iでは、生理学のうち、心臓・循環器系、内分泌系、腎・尿路系、血液系の分野を習得する。正常な機能を学び、臨床に直結する病態生理も学んでいく。臨床医学の学修の基盤となる生理学を習得することを目標とする。生理学学修の基本は、構造と機能、あるいは正常機能と病的な状態を結びつけて学修することである。
2. 一般的な講義形式の授業や実習に加えて、学修の動機・印象付け、問題抽出・解決能力の涵養、自己学修・討論の習慣が身に付くように、それぞれの分野に連結したPBLテュートリアルを実施する。テュートリアルのまとめとしての発表・討論会・解説講義を行うとともに、演習授業や課題演習(Q&A)などの学生参加型の授業を設ける。
3. 講義内容には、生理学・病態生理の習得を効果的にするために、臨床医学との垂直的統合として、臨床医学の疫学・診断・治療の内容も一部含まれる。また、基礎医学間の水平的統合として、正常な解剖・組織、生化学・分子生物学、薬理学の内容も学修の効果を促進する範囲内で解説する。
4. 主に再生機能医学の教員が講義を行うが、臨床医学との垂直的統合として、臨床系の心臓血管センター・腎臓内科・血液・膠原病内科の教員や学外講師による講義を実施する (ユニット責任者も臨床系教員出身であり、学修効果を促進する範囲内で臨床的内容を講義に含める。)。 
5. 主としてパワーポイントスライドを用いて講義を行うが、併せて授業内容を要約した資料をGoogle Driveにアップロードする(紙ベースの資料は配布しない)。資料は、あくまでも講義の参考資料であり、講義内容を網羅するものではないことに留意する。講義を聴講することにより、学修のポイントを把握し、ノートをとることを推奨する。また、講義内容には一部最新トピックスや臨床医学・他の基礎医学分野の内容を含むため、必ずしも講義内容全てが試験の出題項目ではないことに注意が必要である。コース試験には、生理学・病態生理の内容を出題し、臨床の疫学、診断や治療に特化した内容は出題しない。 
6. 学生からの質問は随時受け付けるが、学生がより積極的に質問できる時間として課題演習・Q&Aやオフィスアワーを設ける。
7. 講義内容の理解状況を確認するための小テスト(毎週)、Unit終了後の統括的評価のためのコース試験を行い、カリキュラムの習得度を評価する。関連教育アウトカムの達成度、知識・技能・態度についても、コース試験・テュートリアル・実習において、個別に評価する。
8. 実習とテュートリアルについては、出席とレポート提出は必須である。レポート作成における、生成系AIの使用は禁止する。
9. 生理学は、臨床医学を学修するための基礎学問としてきわめて重要である。教育内容の丸暗記を避け、理論的に理解して頭に学修内容や思考パターンを定着させることを心がけて学修する必要がある。
10. コース試験で合格点を得るのに必要な学修のためには、簡易な参考書やプリント、過去問のみの学修では不充分である。理論的に理解するためには、講義と併行してしっかりした教科書を読んで復習し、学修する必要がある。教科書はユニットが開始するよりも、できるだけ早期に購入しておくことが望ましい。
11. 小テストは講義の習得度を評価するための形成試験であり、講義を聴講することにより習得できる範囲の選択式試験とする。
12. 講義の出席確認はUNIPAのカードリーダーではなく、座席指定により行う。
13. 学生は案内に従って、必ずグーグルクラスルームに参加し、レポートの提出は原則としてグーグルクラスルームに提出する。
14. 関連教育アウトカムについてもその到達レベルをそれぞれ個別に評価する。
授業形態
対面授業(全授業回)
アクティブ・ラーニングの形態
PBL(課題解決学習)・ディスカッション、ディベート・グループワーク・プレゼンテーション・実験・実習科目
ICTを活用したアクティブ・ラーニング
双方向授業(クリッカーや、学生ディスカッション用にGoogleClassroom等を活用)
使用言語
日本語
到達目標およびディプロマポリシーとの関連
対応ディプローマポリシー
医学知識と技能の修得(DP1)
自律的学修能力(DP3)
協調精神とチーム医療(DP4)

対応教育アウトカム
(2)卒後に連結する医学的知識と診療技能(レベルE)
(3)コミュニケーション能力(レベルE)
(6)課題解決能力と医学研究への発展(レベルE)

キーワード
生理学、循環器、内分泌、腎臓、血液

学修・教育目標
DP1と教育アウトカム2の基礎力(レベルE) を培うために、機能Iでは、生理学のうち、心臓・循環器系、内分泌系、腎・尿路系、血液系の分野の正常な機能と、臨床に直結する病態生理を学ぶ。臨床医学の学修や臨床推論の基礎となる生理学を習得することを目標とする。 DP3と教育アウトカム6、教育アウトカム2のための能力を涵養するために、一般的な講義形式の授業や実習に加えて、学修の動機・印象付け、問題抽出・解決能力の涵養、自己学修・討論の習慣が身に付くようにテュートリアル、発表・討論、演習などの学生参加型の授業を設ける。実習やテュートリアルにおけるグループ内での共同作業の中で、DP4と教育アウトカム3達成のための経験を積む。

上記の学修・教育目標の到達レベルを知るための到達目標を以下に示す。
1-1心臓と循環系の構造と機能の関係を説明できる。
1-2自律神経系による心臓と血管運動の調節を説明できる。
1-3刺激伝導系の略図を描き、それぞれの生理的役割について説明できる。
1-4心筋の興奮収縮連関について説明できる。
1-5律動的な洞調律の発生メカニズムを説明できる。
1-6心周期について心音と関連付けて説明できる。
1-7正常心電図の成立機序を理解し、心電図の記録とその解析ができる。
1-8血圧、血流、血管抵抗との関係を説明できる。
1-9心血管に影響を及ぼす内分泌因子について説明できる。
1-10心拍出量曲線と静脈還流量曲線及び圧容量曲線を描き、それぞれの曲線の調節機構について説明できる。
1-11心拍出量の調節機序と心不全の病態生理について説明できる。
1-12冠循環の特徴と病態生理について説明できる。
1-13組織修復機構、再生の3要素、幹細胞について説明できる。
2-1動脈と静脈の生理的役割、相違を説明できる。
2-2毛細血管に作用する力を知り、物質交換の原理を説明できる。
2-3浮腫の病態生理を説明できる。
2-4血圧測定法の原理と方法について説明できる。
2-5血圧調節の機序(短期、中期、長期的調節機構)を説明できる。
2-6循環系の局所性調節について説明できる。 
2-7体位や運動に伴う循環反応とその機序について説明できる。
2-8血圧異常および循環性ショックの病態生理について説明できる。
2-9特殊な局所循環(脳・腹腔・皮膚・胎児・胎盤)の調節機序について説明できる。
3-1ホルモンの種類を構造、作用機構、調節機構の観点から説明できる。
3-2ホルモンのフィードバック制御について説明できる。
3-3視床下部あるいは下垂体前葉・後葉ホルモンの名称、生理作用、調節機構、病態生理について説明できる。
3-4甲状腺ホルモンの産生、調節機構、生理作用、代謝、病態生理について説明できる。
3-5副甲状腺から分泌されるカルシウム代謝調節ホルモンの産生・調節機構、生理作用、病態生理について説明できる。
3-6骨形成・吸収の機序と骨代謝調節、病態生理について説明できる。
3-7副腎の構造と分泌されるホルモンの作用と分泌調節機構、病態生理について説明できる。
3-8膵臓から分泌されるホルモンの生理作用、血糖の調節機構、病態生理について説明できる。
3-9卵巣、精巣、胎盤から分泌されるホルモンの合成・代謝経路と作用について、性周期・排卵・妊娠・出産と関連づけて説明できる。
4-1ネフロンおよび尿路の構造と機能について説明できる。
4-2クリアランスの概念、腎糸球体濾過量、腎血漿流量とその調節について説明できる。
4-3尿細管での電解質・糖・酸・塩基の再吸収・分泌機構とその調節について説明できる。
4-4尿の濃縮機序や腎の対向流理論と体液・浸透圧調節機構を説明できる。
4-5酸・塩基平衡の調節機構について説明できる。 
4-6蓄排尿の機序について説明できる。
4-7腎機能異常の病態生理について説明できる。
5-1造血幹細胞から各血球への分化と調節について説明できる。
5-2主な造血因子(エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、トロンボポエチン)の作用について説明できる。
5-3赤血球とヘモグロビンの機能について説明できる。
5-4鉄代謝について説明できる。
5-5白血球の種類とそれぞれの生理機能について説明できる。
5-6血小板の機能について説明できる。
5-7止血反応と線溶系の生理学的メカニズムについて説明できる。
5-8貧血、止血異常、白血球異常の病態生理について説明できる。
5-9血液型の概念・血漿タンパクについて説明できる。
成績評価方法および基準
本試験(知識を評価し、内容の7割は記述式、3割はMCQとする。再試験は記述式のみで、評価方法は本試験の際の評価方法に準じる。評価は、心臓・循環器系の分野と、内分泌系、腎・尿路系、血液系の分野の2科目に分けて行う。出席要件として、講義・実習・テュートリアル関連授業、それぞれの2/3以上の出席が必須である。授業態度も成績評価に一部加味する。) 70%
実習(レポート・技能・実習態度のそれぞれについてルーブリックを使用して評価する。) 10%
テュートリアル(テュートリアル評価表を使用して、各テュータが自己学修量、討論での発言内容、態度などを評価する。レポートや発表討論会での取り組みも評価する。) 15%
小テスト 5%
試験・課題に対するフィードバック方法
実習レポートは、ユニット期間内にコメント等を記載して返却する。
小テスト終了後に、小テストの模範答案と評価をグーグルクラスルームに掲載する。
コース試験については、過去問を使用した理解の難しい重要項目に関する課題演習を週1回行う。MCQの解答は公開する。
教科書
[ISBN]9784260034296 『標準生理学 第9版 (Standard Textbook)』 (本間 研一, 医学書院 : 2019)
参考文献
[ISBN]9784895928915 『ハーバード大学テキスト 心臓病の病態生理 第4版』 (川名正敏, メディカルサイエンスインターナショナル : 2017)
[ISBN]9784895927208 『ハーバード大学テキスト 血液疾患の病態生理』 (奈良信雄, メディカルサイエンスインターナショナル : 2012)
[ISBN]9784498224445 『臨床がわかる腎生理』 (柴垣 有吾, 中外医学社 : 2018)
[ISBN]9784860347741 『ガイトン生理学 原著第13版』 (John E. Hall, エルゼビア・ジャパン株式会社 : 2018)
[ISBN]9784896328301 『病気がみえる vol.2 循環器』 (医療情報科学研究所, メディックメディア : 2021)
[ISBN]9784896327663 『病気がみえる vol.3 糖尿病・代謝・内分泌』 (医療情報科学研究所, メディックメディア : 2019)
[ISBN]9784896329223 『病気がみえるvol.5 血液』 (医療情報科学研究所, メディックメディア : 2023)
[ISBN]9784896327717 『病気がみえる vol.8 腎・泌尿器』 (医療情報科学研究所, メディックメディア : 2019)
関連科目
機能Ⅱ(生理学)、人体構造I-IV (解剖学・組織学)、生化学、分子生物学、薬理学、臨床各論I (内分泌代謝内科学)、臨床各論II (循環器内科学、腎臓内科学、泌尿器学)、臨床各論IV (血液内科学)、臨床各論V (整形外科学)、臨床各論VI (産科婦人科学)
授業評価アンケート実施方法
実施規定に準拠して実施する。講座独自の無記名アンケートをユニット中に2回実施する。
研究室・メールアドレス
研究棟6階 再生機能医学教室・hisyosai@med.kindai.ac.jp
オフィスアワー
月曜 PM5-6時
授業計画の内容及び時間外学修の内容・時間
講義
1心臓、脈管の構造:心臓の構造、脈管の種類・構造
2心血管と神経系:自律神経系による心臓・循環系の調節機構
3興奮収縮連関:心筋の活動電位発生とイオンチャネル、心筋の収縮過程、不整脈の病態生理
4刺激伝導系:心臓の刺激伝導系、洞房結節と房室結節
5心電図の成立機序と異常:心電図の概念、導出方法、各波形の発生機序、心電図と不整脈の関係
6心血管と内分泌系:循環調節におけるレニン-アンジオテンシン系、抗利尿ホルモン、カテコールアミンの役割
7心周期:周期的な圧・容積変化と弁の開閉に伴う血行動態、心音
8血行力学:血圧、血流、血管抵抗の関係、循環各部の血圧の違い、ポアズイユの法則
9再生医学:再生の3要素、幹細胞、種々の再生医療、再生医療等安全性確保法、再生医療の課題
10心拍出量と静脈還流量:心機能曲線、心拍出量と静脈還流量の調節機構
11心不全:心不全時の急性・慢性代償機構、心不全の心拍出量・静脈還流量曲線を用いた理解、各種心不全の病態生理、心不全の治療と薬理
12冠循環の調節:冠動脈の解剖、冠循環の特徴、冠循環の調節、虚血性心疾患の病態、虚血性心疾患の治療
13圧容量曲線:圧容量曲線と心周期、前負荷と後負荷、病態の圧容量曲線による解析
14短期的血圧調節:圧受容器反射、化学受容器反射
15中期的血圧調節:レニン-アンジオテンシン系、バソプレシン、応力緩和
16長期的血圧調節:腎体液性調節機構、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系
17血管の機能:静脈、毛細血管の機能、血管運動の調節
18局所循環調節:脳循環、腹腔循環、皮膚循環と体温調節、胎児・胎盤循環
19血圧異常:高血圧、低血圧の診断と病態生理
20末梢循環リンパ:毛細血管に作用する力、末梢組織での物質・水分交換、リンパの流れ、浮腫の病態生理
21循環性ショック:循環性ショック時の循環動態、神経性ショック、アナフィラキシーショック、敗血症性ショック
20運動と循環:運動時に伴う循環反応とその機序
21内分泌系総論:ホルモンの構造的分類、作用機序・分泌調節機構、ホルモンの日内変動
22視床下部・下垂体:視床下部ホルモン、下垂体前葉、後葉ホルモンの作用・調節機構と病態生理、成長ホルモン、プロラクチンの作用・調節機構、乳腺の機能
23甲状腺:甲状腺ホルモンの合成・分泌調節機構と病態生理
24副腎:副腎皮質ホルモンの合成・分泌経路・分泌調節・生理作用と病態生理
25生殖・性腺:性分化、精子・卵子の形成、生殖器・性腺の機能、性ホルモンの合成と作用、女性の性周期と排卵、妊娠・出産時の性ホルモン・胎盤の機能、分娩の経過、閉経
26カルシウム・リン代謝:カルシウム・リン代謝調節機構、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、活性型ビタミンD、FGF23の作用・調節機構と病態生理
27膵臓:インスリン、グルカゴンの分泌・分泌調節機構・生理作用、血糖調節機構と病態生理
28骨代謝:骨の機能、骨リモデリング、骨形成・骨吸収機構と病態生理
29骨軟骨再生:トピックス 
30内分泌演習:内分泌疾患における病態生理・課題演習
31腎・尿路系総論:腎・尿路系の構造と機能の関連、腎・尿路系のアウトライン、体液の量と組成、電解質の基本
32腎・尿路系の構造:腎臓、ネフロン各部、膀胱の構造と機能
33糸球体機能:腎血漿流量、腎糸球体濾過量、糸球体の腎糸球体濾過量調節
34排尿機能:蓄尿反射、排尿反射、神経因性膀胱
35尿細管機能-1:尿細管機能の原則、尿細管の電解質調節機構 (Na, K, Ca, P, Mg)
36尿細管機能-2:糖・尿素・尿酸・アミノ酸の再吸収機構、病態生理
37体液・浸透圧調節:体液量・浸透圧の調節、尿の希釈・濃縮機構
38酸塩基平衡の調節:重炭酸緩衝系、腎における酸塩基平衡の調節機構、アシドーシスとアルカローシス 
39赤血球:赤血球とヘモグロビンの構造と機能、エリスロポエチン
40腎疾患の病態生理:腎血流の自動調節、尿細管糸球体フィードバック、筋原反応
41止血機構:血小板の機能、血液凝固線溶系
42白血球:白血球の種類と機能
43線溶系トピックス:線溶の機序
44血球の分化:造血幹細胞から各血球への分化と成熟過程、造血因子
45血液疾患病態生理:貧血、白血病、止血異常の病態生理
46血液型・血漿蛋白:ABO式、Rh式血液型、血漿蛋白の種類と機能
47鉄代謝:鉄の機能と代謝

実習
心電図の記録、心音聴取、血圧測定、血糖測定、尿濃縮機構、血液系の機能に関する実習を行う。

テュートリアル
テュートリアル授業

課題演習Q&A
課題演習と質疑応答

予習内容:シラバス・コースガイドや教科書を参照し、学修すべきポイントを整理する。(30分/日)
復習内容:教科書「標準生理」や配布プリントを読み返し、講義内容について復習し、理論的に理解する。実習・テュートリアルレポートを作成する (3時間/日) 。疑問点は、教員に質問する。その他にコース試験の準備に自宅学修時間を必要とする。

ホームページ
実践的な教育内容
経営者、技術者、研究者、行政官等の当該授業科目に関連した実務経験がある教員が行う授業